The NEKOJIMA M@STER｜リアクション

The NEKOJIMA M@STER

【テレビ『金曜どうしましょう？』】

　二月某日。朝。
　その日、宇佐見望月はスズシマにいた。
　空は高く澄み渡り、海は轟と荒らぶっている。
　というか、寒い。超寒い。これは新手の新人イジメじゃないか、と望月はちょっとだけ思う。
「ていうか、何だよこの企画！　サイコロを振って出た目で、開拓する場所を決めるってアホすぎるわー、超アホすぎるわー」
　望月はぶつくさと言いながら、色鮮やかに塗られた一抱えほどもある巨大なサイコロを転がした。
　テレビ『金曜どうしましょう？』の人気企画『スズジマ開拓記』は、今まさに旬の男性アイドルを島に放り込んで新たなフロンティアを築こうという企画だ。
「えーっと、４が出たな。４が出た場合は……なんだっけ？」
　望月が助けを求めてプロデューサーを見やる。
「もっちゃん話聞いてないでしょ、４は海で食材採りです！」
「海で！？」
　望月は思わず地面から飛び上がった。だって、今は二月。真冬である。何が悲しくて真冬の海で食材を取らないといけないのか。
「はい。それじゃあとっとと脱いで脱いで～♪　なんだったら、僕が脱がしてあげようか？」
「やめろっ！　そのぐらい俺様一人で出来るわっ！」
　何かと自分を子供扱いしてくるプロデューサーに大声で突っ込みつつ、望月は物陰でこっそりと着替え始める。
（あー。そういや、何で俺様が色々資格取った（取らされた）かわかったような気がするなー）
　プロデューサーにアドバイスされ、潜水士を始めとした色々な資格を取得させられた意味が今唐突に理解できた気がして望月は思わず白目になった。
　とはいえ、仕事があるということはいいことだ。
　てきぱきと準備体操などして身体をウォームアップさせつつ、望月はパシンと頬を叩いて覚悟を決める。
「おお、もっちゃん！　水着良く似合ってるよ！　若手アイドルのサービスシーンで、真冬の寒さで膠着した視聴率もグングン上昇間違いなし！」
「いや、そういう生々しい話はいいから！　ていうか、カメラまわってるし！」
　望月は突っ込みつつ、試験で学んだ知識を総動員して果敢に極寒の海へ飛び込む。アイドルといえど、男は度胸、女は愛嬌、そんな心持ちで。

「……ていうか、寒っ！　真冬の海冷たッ！」
「もっちゃ～ん。頑張ってね～。年寄りはゆったりドラム缶風呂にでも入って待ってるよー」
「プロデューサーテメェッ！」

　荒ぶる望月の突っ込みが、真冬のスズシマの灰色の空と海に殷々と響く姿にカメラマンは大層苦笑していたという。

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