打ち切り世界の伏線回収者～Flag Savior｜リアクション

打ち切り世界の伏線回収者～Flag Savior

●第四十章～魔王最終決戦
『ククク……よくぞ此処まで来たな、愚かな人間共よ』
　――そして遂に、一行は魔王との最終決戦に臨んでいた。圧倒的な魔力を以て勇者たちを追い詰めていく魔王だが、其処で刀が今までの旅路を振り返りながら、確かな声で語りかける。
「魔王、お前も王として果たすべき責任を果たしていたんだろう。お前に付き従ってきた臣下達は強かった、そして誇り高く立派だった」
　奴らを見れば、あんたの今までが分かる――刀はそう言ったのだが、四天王とかは流れ作業で倒してきたし、中には楓子みたいな愉快犯も居たことには触れずにおいた。
「そのお前を今から殺す。俺にも俺の事情がある。お前の今までとこれからを否定してでも、通したい事情がな」
　――あの世でお前が、臣下を労えるよう送ってやる。その決意を吐き出すと同時に、刀の頭の中で撃鉄が落ちた。瞬間、彼の肉体と精神は加速し――それと相対的に、目に映る世界の動きがゆっくりになる。
「斬る――！」
　魔王の死角へ潜り込み、振るわれた刃は急所を断ち切ろうと切っ先を閃かせて。しかし魔王の勢いは止まらず、紡がれる呪詛を刀で逸らすことも能わずに、彼は勢い良く大理石の床へと叩きつけられた。
「……このままでは……」
　誰かが零した呟き通り、勇者一行は魔王の圧倒的な力の前に屈しつつある。その時、不意に動きを見せたのは、後方より射撃を行っていたさゆるだった。まるで、死をも恐れていないと言うように――彼女は薄い笑みを浮かべると、魔銃を構えて魔王の懐へと飛び込んでいく。
（……行くわ）
　己の狂気と残りの生命、その全てを注ぎ込んで放つのは、零距離からの射撃であった。破滅の弾丸は魔王の魔力核を貫き、著しく彼の力を削ぐことに成功する。しかし、その代償は――さゆるの命。
『ウオオオオォォォォ！！』
　花散るようにさゆるが床に倒れ込むと同時、魔王の絶叫が広間を震わせた。しかし、これで終わった訳では無い――魔王は何段階かの変身を残しているのだ。
「ふははは、第二の楓子参上！」
　――が、お色直しに時間を取られている間、急遽退場した筈の楓子が引っ張り出されてきた。それを死んだ魚のような目で見つめるアカリは、最終決戦の場所でも商売をしている望春から、一番威力のある武器を購入して無言で振りかぶる。
「武器はちゃんと装備しないと駄目だからな！」
　お約束の台詞を放つ望春のエールを受けて、アカリが叩きつけたのは、物凄く痛そうな棘付き鉄球――モーニングスターと呼ばれる凶器だ。
　ぐしゃ、と嫌な音がした直後『しばらくお待ちください』と言う文字と共に、綺麗な風景が暫く表示されていたのだが、その後は何も無かったかのように魔王戦に舞台が切り替わった。
「これで勇者が魔王と戦う体裁も整った。あとは倒すだけだ！」
　と、黄色と黒が組み合わさった、勇気――じゃない勇者の印を修が皆に掲げ、絵的にも盛り上げようと武器を光らせる。眩い輝きに背中を押された一行は、最後の力を振り絞って変身した魔王へと突撃――加速した肉体で駆け抜ける刀は空気を足場に跳躍して、魔王の額にある第三の眼に刃を突き立てた。
「この刃が届くまで、世界よ凍てつけ！」
　――貫かれた瞳から光が注ぎ込まれ、魔王の肉体が内部より破壊される。大爆発が城を震わせた後、邪悪な魔王は塵一つ残さずに消滅していた。

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