――ぱちぱちと瞬きをすれば、頭上には清々しいほどの青空が広がっていた。そよそよと吹く風は穏やかで、広大な草原からは今にも勇ましい行進曲が聞こえてきそうだ。
「……って、ちょっと待ておい」
ようやく我に返った
楢木 春彦は、其処で自分の格好を見回してぽりぽりと頭を掻いた。何故かは知らないが、自分はゲームや漫画なんかで良く目にする、所謂ファンタジー風の剣士の姿をしていたのだ。
「おお、ようこそ救世主さま。貴方の力が必要なのです!」
と、彼の元へふよふよと飛んできたのは、手乗りサイズくらいのちいさな妖精だった。見た目は可愛らしい女の子に見える彼女は、この世界の神によって遣わされた存在であると自己紹介をする。
「実は、この世界は間もなく終焉を迎えます。終わるのです、最終回なのですよ!」
「何その身も蓋もない言い方」
――そんな訳で、必死に羽を震わせて力説する妖精によると。この世界は魔王によって滅ぼされようとしており、それに立ち向かう為伝説の勇者が立ち上がったらしい――のだが。
「神様がハッスルし過ぎて、伏線を張りまくってしまったのです。勇者の宿命のライバル、彼との決着と仄かな友情……そして、魔王に洗脳されてしまったかつての仲間」
うん、それは確かに燃える展開なのだが、神様は勇者の葛藤をドラマチックに盛り上げるべく、嫌と言うほどイベントを盛りに盛りまくったらしい。その結果、もう魔王の城へ辿り着き最終決戦を行わなければならない時なのに、勇者は足止めを食いまくって、どう頑張っても決戦に間に合わなくなってしまったのだそうだ。
「このままでは、勇者不在でフィナーレです! 魔王のお披露目も無しに『俺たちの戦いはこれからだ』とか言って強引に纏められてしまうんですよ!」
「え? 打ち切り漫画みたいな世界なの此処? そりゃこの世界の人達も怒るだろ」
なので異世界よりやって来た救世主――春彦たちの力が必要とされているのだ。勇者の代わりに魔王の城へと乗り込み、張りに張られまくった伏線を回収して綺麗に物語を終わらせて欲しい――妖精の頼みに春彦は、まあ何とかなるだろと、持ち前の楽観主義で乗り越えてみることにした。
「取り敢えず『こんな展開ありそうだなー』と思ったらまずあると思って間違いありません。救世主さま達はきっちりとその伏線を回収して欲しいんです」
「あー、魔王配下の四天王とか、真の魔王とかそんなの?」
「はいです。四天王は一番の小物が倒された段階で、まだ3名ほど残ってます。魔王も……2、3回変身したりとか、そんな雰囲気で進めてました」
――うわ、典型的な打ち切り最終回のパターンだと春彦は思った。これは仲間たちと協力して、無理矢理にでも物語を綺麗に纏めていくしかない。
「皆さまの想い、想像力がこの世界を変えていくのです! 頼みましたよっ」
最後、見事に此方に展開を丸投げして妖精は姿を消した。それじゃあ行こうか――と、春彦は既に大冒険をしまくったような疲労感を覚えて一歩を踏み出す。
「……ところで、肝心の勇者とやらは何処に行ったんだ?」
――辿り着いた村で、勇者が『さがさないでください』と書き置きを残して行方知れずになっていると彼らが知ったのは、それから少ししてからのことだった。
柚烏と申します。前作に引き続いて異世界もの、しかし何処かメタな気配が漂う、カオスな空間が舞台となります。
●舞台の説明
今回の舞台は、ゲームや漫画のようなファンタジー世界です。邪悪な魔王が世界を滅ぼそうとしている所に、勇者が立ち上がり……とここまでは良いのですが、凝り性だった神様はこれでもかとイベントを起こし、伏線を張りまくってしまいました。
その為、最終決戦の時が近づいているのに魔王の元まで辿り着けない。このままでは打ち切りエンドを迎えてしまう! そんな終焉を回避するべく、皆さんが召喚されたと言う筋書きです。
●取り敢えずの目標
勇者の代わりになって、色々な伏線に決着をつけて魔王を倒し、きっぱりと物語を終わらせる。
……ですが勇者一行にならず、四天王の一人になるとか俺が真の魔王になるとか、好きな役になりきって大丈夫です。こんな役がいそう、と思った役になるのも良しです(師匠とか囚われの姫とか)。その際はコメントページで打ち合わせた方がスムーズですが、別に魔王がいっぱいいても何とかなるかもしれません。
●伏線回収
魔王を倒す以外にも、やるべきことはあります。
・四天王の残り3人を倒す
・宿命のライバルとの決着
・魔王に洗脳された仲間との葛藤
……などなど。はたまた「こんなイベントがあるはず!」と思ったイベントを解決しても構いません。
●世界観やアドリブについて
・ガイドの雰囲気の通りメタな話題も通じる、なんでもありのファンタジー世界です。カオスやコメディ成分も含まれておりますので、自分の格好いいイメージが崩れるのは嫌だ、と言う方はアドリブ度を低くしておいてください。
(例)地面に落下して人型の穴を開けるが、本人はぴんぴんしている。軽くどつかれ、鼻血を噴いて吹き飛ばされるが、次のシーンではぴんぴんしている、など。
・また、攻撃や魔法などの演出は自由に行えますが、それによって威力が左右されたりはしません。
(例)封じられた堕天使の力に覚醒し、滅びの十字架を辺りに降り注がせるのと、ハリセンでどつくのは同じ位のダメージです。
●注意点
元ネタありのパロディはほどほどに。版権に関わる内容は描写出来ません。
この世界がどんな結末を迎えるかは、皆様に委ねられました。是非、打ち切りの危機に瀕した世界を綺麗に救ってください。それではよろしくお願いします。