天界よりの試練　――極天使・自由を歌う者ユヅキール――｜リアクション

天界よりの試練　――極天使・自由を歌う者ユヅキール――

結：fine　夢の跡

　がくり、と楓は膝をつく。夏朝が駆け寄ったとき、彼の体は七色のシャボン玉に姿を変えていた。

　だが、急に教会の崩落が再発し、激しく崩れようとする。
「まさか、制限時間オーバーか？！」
「……だったら、瓦礫の中でエンディングか……」
　新田亮が表情を険しくし、桜庭円が苦笑する。そうしつつも２人は傷ついた仲間を庇おうと金と土の属性を同時に発動させ屋根を作っていた。

　――それが、お前達の魂の音か。

　不意に、ユヅキールの声が聞こえる。喉をやられた筈だ、と残った冒険者達が困惑したとき、倒れたユヅキールの体が柔らかな光を放ち、音も無く翼が生え変わった。

　――愚かで、欲深い。まさに人間らしい音だ。
　　だが……。

　ユヅキールは両手を伸ばし、指揮をするように手を動かす。だがそこから流れたのは闘争心をかきたてられるような音ではなく、勝者を称えるような旋律だった。その表情は穏やかで、威厳に満ちていた。
　冒険者達はおもわず背筋を正し、彼の言葉を待った。

　――悪くない。
　　　いいだろう、お前たちに祝福を与えよう。

　ユヅキールが微笑み、天井にあいた穴から降り注ぐ光に解けていく。

　――交わった音が、声が。
　　　この先どんな唄になるのか。
　　　俺は、天界から見守らせてもらおう。

　降り注ぐ、柔らかな光の中、厳かな勝利の旋律が響き渡る。冒険者達は、皆、立ち上がって歓声を上げた。
　ある者は歌い、ある者は仲間と抱き合い、ある者は拳をぶつけて健闘をたたえあう。あの激闘を共に乗り越えたのだ。喜びもひとしおだ。
（やりましたよっ！　私達、ユヅキールに勝ったんですよっ）
　九月は胸に手を置き、静かに言う。戦闘不能となってしまったメンバー全員にも、その喜びを伝えたかった。

＊　＊　＊　＊

　戦闘不能となり、先に戻っていた楢木春彦は、我に帰り目をこすった。
（なんだか、長い夢を見ていた気分だ……）
　そんな事を思っていると、しばらくしてねこったーにこんな書き込みがあった。

　――ＳＯＣニュース：ユヅキール討伐成功！　ラストレイドに登場は、地竜と機兵と風の王子？！

（……地竜は、新田で機兵は……桜庭だろ？　じゃあ風の王子って……まさか、俺？！）
　春彦は困惑したものの、ユヅキール戦は無事に勝利で幕を閉じたらしい。そのことがわかり、なんとなくほっとする春彦だった。

　同じ頃、白真白もまた、己のパソコンで仲間達の勝利を知っていた。画面の向こうでたくさんの仲間達が喜びの声をあげている。
「みんなと戦えてよかった。でも、私もあの場所にいたかったかな？」
　真白は小さくつぶやくと、モニターの光景を優しい眼差しで見つめるのだった。

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