進撃スイーツ　ーValentine war ー｜リアクション

進撃スイーツ　ーValentine war ー

　彼は、町田清。寝子高２年５組の生徒で、ショコラティエを目指しているという。その一方、美少女アニメがすきで、可愛い女の子のフィギュアも作っていると。
　そんな彼は、バレンタインという事もあり女の子の姿をしたチョコレートを作る事にしたと言う。
「……で、たまたま話を聞いていた野々がモデルに立候補、と……」
「元気なののこちゃんを見ていて、創作意欲が湧いてね。できたら彼女にプレゼントする約束だったんだ」
　清の言葉に、修と絢はとりあえず相槌をうつ。と、弱点の聞き出しに掛かる。と、彼はあっけなく言う。
「熱と衝撃には弱いかな。まぁ、ちょっとやそっとの熱さじゃすぐに効果は無いだろうけど、じっくり暖めたり、何度も衝撃を加えたら壊れる、筈」
「「正攻法だ（だわ）」」
　修と絢の声が重なった。

　修たちが話している間も、アグラーヤは戦っていた。
「魂を、捧げよっ！」
　と、とある巨大な敵を相手に大暴れするアニメで出される敬礼をし、くるり、と翻って硬質ブレードを躍らせる。だが、手ごたえは浅い。
（んー？　妙に嫌な予感？）
　はて？　と何かを感じて首を傾げるアグラーヤだったが、すぐに気を取り直して跳ね回った。フィギュアが手を振り回してアグラーヤを追い払おうとしているからだ。
「いやっはー！　てやっはぁっ！　うおらっひゃぁああっ！」
　奇妙な掛け声を上げながら切り裂きジャックもかくや、といった様子で暴れまわるアグラーヤ。だが、フィギュアはそんな彼女を無視し、ついに動き出した。
「およ？　どしたんだろ？」
　不思議に思いながらも、アグラーヤは追いかける事にした。

　時間を少し撒き戻し、フィギュアの足元。
　屑利執は、慣れた手つきで魔方陣を描いていた。そして念じれば彼のろっこん『降臨の儀』は発動し、本土在住の人の良さそうなサラリーマン、沼田さんが召還される。
「……屑利君、今日は一体何でしょう……？」
　スーツ姿の沼田さんが眼鏡を正し、問いかける。聊か嫌な予感がしているのか、不安げだ。そんな彼に執はびしっ、とフィギュアを指差した。
「今回は、いっちょあの巨人を倒してきてくださいっ！」
「えっ？！　あ、あれを……？」
　執が指差したのは、全長２０ｍほどもあろう巨人……ではなくチョコレートのフィギュアである。沼田さんは戦慄した！
（一体どうやって？！）
　普通の人間だったら怒るかもしれない。無視するかもしれない。しかし、沼田さんは比較的お人よしだった。そして、娘さんが執と同じぐらいの年齢というのもあり、それで断りにくいのだった。
「当たって砕ける勢いで、体当たりすれば多分いけますって！　お願いしますっ！」
「……う、うん。駄目元だけどやってみるよ」
　弱気な沼田さんではあるが、よし、と気合を入れてフィギュアへとおもいっきり体当たりしてみる。だが、うんともすんともいわない。２、３回やったところで、沼田さんは息を切らしてしまった。
　そこで執が取り出したのは焼きメレンゲ。実を言うと気力強化の効果があるのだが、あくまでも回復するのは気力である。体力ではない。執はそれをちょっと疲れた沼田さんの口に入れた。
「ん？　すごく甘い……。これは焼いたメレンゲ？」
「はいっ！　これを食べてもう１回行って来てください、沼田さん！」
　最初は訝しがっていた沼田さんだが、気力が回復した事でやる気を出す。沼田さんは一生懸命走り、フィギュアへと体当たりを決めるのだった。
　そんな沼田さんを観察し、記録をつける執。そんな彼が見つけたのは、ウエハースでできたサンマさん。「なんだろう？」と執が思ったそのとき、フィギュアが動き出した！
　体当たりをしようとした沼田さんが、勢いよくこける。執は沼田さんに焼きメレンゲを口に大漁に放りこむと、手を引いて追いかけるのだった。