進撃スイーツ　ーValentine war ー｜リアクション

進撃スイーツ　ーValentine war ー

　怯んだフィギュアが足を止める。それを好機とばかりに碧南は何度も攻撃を繰り返した。
「よぉーし、僕もがんばるぞっ！　とりあえず転ばせるとかすれば……っ！」
　そんな碧南たちに触発され、夏朝はろっこんを発動させ進化能力でありったけのねこシールをフィギュアへと飛ばしていく。
（めいいっぱい、重く……重く……っ！）
　途中で焼きメレンゲを口にして気力を保ち、持ってきた川の水（グミ）を頬張る。ろっこんの強化を感じ取った彼女は更に気張った。
「ほな、俺もいくでっ！」
　清一郎がその側を走り、思いっきり殴りかかる。その一撃になにやら重いモノを乗せているのは気のせいだろうか？
「誰からもチョコ貰えてない俺の恨みを思い知れ！！」
　なぜだろう、その背中が妙に寂しく思えた夏朝たちなのであった。

　その頃、フィギュアからちょっと離れた住宅街では……。
「俺、お菓子の家を丸ごと食べるのが夢だったんだ……っ！！」
　目をキラキラ輝かせてお菓子を食べていた優木遥斗はそこではっ、と我に帰った。
　――こんなことやってるばあいじゃないっ！
　　フィギュアの接近に気づいた遥斗は竹刀を手に屋根へと駆け上がる。そして、幾つもの家屋を飛び渡り、竹刀を閃かせた。その一閃で右の手首が折れ、チョコレートの塊が空き地へと落ちて砕ける。
「やるな……っ！」
　見ていた修がやる気を漲らせる。遥斗は地面へと降り立つと、今度は足元を狙うのだった。

「こっちよ！」
「うりゃああっ！」
　碧南がかりんとうで殴りかかり、アグラーヤが硬質ブレードで切りかかる。偶然にもクロスした一撃に、フィギュアがたたらを踏む。
「まだまだやあああっ！」
　清一郎の強力な一撃がきまるも、まだフィギュアを壊すには至らない。絢もまた近くにあった物で殴りかかっているものの、手ごたえは薄かった。
（なかなかうまく行かない……）
　グミでろっこんが強化されている夏朝は内心焦る。だが、彼女の知らないところで、徐々に力を発揮していた。
　焼きメレンゲで胃がもたれてきた沼田さんだが、それでも執によって口に放り込まれ、何度も体当たりしている。そんな彼の頭に降りかかるは、細かいチョコレートの粉、である。それを全身に浴びた沼田さんは、傷が癒えた気がした。
「沼田さーんっ！　焼きメレンゲ追加だよー！」
「！？　わ、わかったよっ！」
　執が焼きメレンゲをぐわしっ、と掴んで沼田さんの口に放りこむ。沼田さんは必死に咀嚼して飲み込むと、再び体当たりを繰り出す。
「手荒な真似ですまないが」
　強化された身体を活かし、修は近くにあった電信柱を引っこ抜いていた。それをおもいっきりフィギュアへと叩きつけ、近くの家屋に激突させる。そして瞬時に建物をろっこんで『分解』し、お菓子の瓦礫で物理的に固定してしまった。
　時子と尚輝が用意したウェハース製サンマさんによって誘われ、修に固定されたフィギュア。だが、腕を使って脱出しようともがき始めている。
「ふっふーん、まだまだ遊んでよー！」
　追いすがったアグラーヤが硬質ブレードで切りつける。手首が折れた右腕で追い払おうとするフィギュアだったが、その時、バキッ、と音を立てて腕が根元から折れた！
「……って、もげたーっ！？」
　アグラーヤが叫び、地上に居た面々は回避。砕け散ったチョコレートは甘い香りを放ち、思わず口にしたくなる。
　その光景を見、ろっこんを使っていた夏朝はおもわずガッツポーズ！
「ろっこんが、効いた……っ！」
　どうやら夏朝のろっこんと、時子の策、アグラーヤの立体軌道が生み出した結果、のようだった。少し暖まった上ひびが入っており、その為夏朝のろっこんの影響をもろにくらったらしい。音を立てて割れた右腕に、一同騒然。だが、気力を使い切ったのだろう夏朝は意識を失い、清一郎によって回収された。

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