進撃スイーツ　ーValentine war ー｜リアクション

進撃スイーツ　ーValentine war ー

「こ、これでいいでしょうか？」
「ほんま、おおきに！　いただきますっ」
　清一郎は笑顔でメイお手製のお菓子を口にした。その瞬間、力がわきあがるような感覚がし、さっきより体が軽くなった気がした。
「ほな、先生を安全なとこにエスコートしたら……あいつをぶっ飛ばしてくるわ」
　清一郎はそっとメイの手を取って行動開始。比較的安全だろう高台にメイを送っていくのだった。その背中を見送り、夏朝は川の方へ向かう。
（まだ川の水を試してないんだよね。何が強化されるんだろう？）
　夏朝は、少々わくわくしつつ川へ走った。

　その頃。別の場所では……。
「実に大きいですね……。最近の夢は、リアルです」
「先生っ！　立っていては危険ですよ……」
　フィギュアの大きさに感嘆の声を上げる五十嵐尚輝に、御巫時子が移動を進める。尚輝は少し考え、時子と共に移動した。
　尚輝が動く巨大なフィギュアを観察している傍ら、時子はフィギュアの誘導方法を考えていた。
（チョコレートですから、暖かい物に弱い筈です……。暖かな場所へ、誘導するには、ののこさんの好きな物、サンマさんを使うのがいいでしょうか……）
　材料ならば、メレンゲや屋根のウエハースがある。時間はないが材料はある。そして、ののこが逆に嫌いな物……テオの形にしたお菓子を学校に置けば、よらないかもしれない、と考察しつつ道端の石を口にした。さくさくとした歯ごたえと、懐かしい甘さが口いっぱいに広がる。オーソドックスなクッキーのおいしさに、時子はやんわりとした表情に。
「？　御巫さん？」
「先生、これ、おいしいですよ……？」
　時子はやんわりと笑って尚輝の口に石（クッキー）を入れると早速ウエハースでサンマさんを作り始めた。

「ひゃっはぁっ！　進撃のチョコレートだぁ～♪」
　そういいながら立体軌道を行っているのは、白い髪を躍らせる　アグラーヤ・ストゥーリナだった。彼女は謎の声を聞いた後、すぐさまお菓子を口にした。またたびメイトを口にすれば腕力があがり、ウエハースを食べれば脚力があがっていた。
　手にしているのは、ろっこん『Соьлжа-ГIала』で生み出した硬質ブレード。それをつかって彼女はフィギュアへと切りかかっていたのである。だが、フィギュアも黙っては居ない。斬られぬよう手を伸ばしてアグラーヤを追う。いつの間にかアグラーヤのお陰かフィギュアは歩みを止めていた。

（す、凄い……）
　その光景を見、僅かに考えるのは青山絢。もれいびとなってから初めて神魂絡みの事件に遭遇した彼女は
「私は、少なくとも戦いには向いていないわね」
　と静かに呟いた。
　絢のろっこん『わたしのなかのあなた』は『現像された写真の人物の瞳を１０秒間見つめる』と『撮影された人物の容姿・声をコピーできる』というもの。確かに、戦闘向きではない。
　ならば、元凶であるフィギュアを作った人物を探そうか、と考えていると……１人のイケメンが、そのフィギュアへと向かっていた。
「この巨大なチョコフィギュアと関係があるのかな？」
　急に声がして振り返ると、八神修が彼を見ていた。そしておもむろにウエハースを齧り、小さく頷く。彼と絢の目の前で、イケメンは「こんなこと想像してなかったんだけどなー」と困った顔で呟いていた。
「あの様子からして、そうじゃないかな」
　修は聞こえてきた声がテオのものではないか、と考えながら街の物を食べていた。小石を齧ればクッキーで、屋根をろっこんで『分解』して食べればウエハース。アスファルトを食べればまたたびメイト、と次々に食べながら状況を把握していた。
「あの、ちょっといいかしら？」
　絢が声をかけると、青年は慌てた様子で
「悪いっ！　俺がつくったチョコフィギュアが暴走してるからそれ止めないと！」
　と行って走ろうとする。だが、修がそれを引きとめた。
「落ち着いてくれ。俺たちはあのフィギュアを止めたいんだ」
　その言葉に、青年は少し落ち着きを取り戻した。

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