激走！　寝子島横断三人四脚駅伝！（第三区間）｜リアクション

激走！　寝子島横断三人四脚駅伝！（第三区間）

●次に託すまでが勝負です！

「流石に辛いね……皆大丈夫？」
「ま、まだまだ」
　日向の言葉に頷いた野子だが、流石に重たい。
　ふとしたところで紐が解け、集中力は一旦切れた。
　バテ始めた松チーム、持久力の無さはたたって、順位は着実に落ちていた。
「よし、じゃこうしよう！」
　ひびきが声を上げた。果たして、その案とは！

　中継地点の数十メートル前あたり。
　なんと最初に飛び込んできたのは梅チームだ！
　爺に親切をやりきった後からの本気を出しなんと、首位に踊り出た。
　走る姿は喩えるならば 『こんじょぉぉぉぉぉぉぉぉぉ』にほかならない。
　
　そこでも忘れないネコとの連携。
　とくに六月一日宮檸檬はリフティングで魅せることは忘れなかった。
　走りながら鈴木修一郎や猫ヶ崎獅子子、更には頭の上のネコにまでツッコミを入れていたが、
　細かな内容までは定かではない。
　紐はもう解けかけていた。
　中継地点にたどり着いた時、それは自然に解けた程に。

　その後ろは団子状態で何組かが確認できた。
　松チームと竹チームも食い込んでいる。
　一旦はほぼ後ろの順位を占めた寝子島高校チームだったが、気合と根性と、仲良しで持ち直したのである。

「ゴール見えたよ～！」
　最初の並びを途中で変えてきたのは松チーム。
　若干元気の残っていた天馬ひびきを真ん中にしての猛走を成し遂げたのである。
　しかし最後の最後で　紐を強く結びすぎたのかなかなか解けない。
　野中野子は最初と同じく焦りながらも、必死に　紐を解いた。
「……任せたよ！」
　紐を最終区間の走者に託して光村日向はようやく息を吐く。

　そんな松チームとほぼ同時だったのは竹チームだ。
「ちーちゃん、ゴールだよ！」
「う、うんっ」
「ほら、ちーちゃん」
　既に疲れきった上穗木千鶴を八十八旗信彦と瑠璃条ベガがカバーし支えて。
　次の走者達へと紐を手渡した。

　区間は第三区間から、最終区間へと入る。
　各々は選手たちの背中を見送っていた。
　後は頼む！　全員がその思いを託して、競技は終了となった。

●気になる区間賞は？
　
「それでは区間賞の発表に移りたいと思いまーす！」
　寝子島高校の３チーム９人と、その他のチームの視線が一気にスタッフに集まった。
　走りきった達成感ですっかり忘れ去られていたものだが、アナウンスが入るとやはりドキドキするものだ。

「第三区間の区間賞は――」

　どきどき。
　どきどき。

　おい、引っ張るな！　間が長いぞ！
　みんなのドキドキが最高潮に達した瞬間！

「梅チーム、六月一日宮檸檬さんです！　ネコをリフティングしながらの爽やかでセンターかっこ良かったですね！」
「へっ……？　俺？」
　檸檬がきょとんと首を傾げる。
　目標の一位通過ですっかり気の抜けていた彼は、まだ実感できないで居る。
「ほら、六月一日宮行ってこい」
　修一郎に背を押され檸檬はスタッフの元へと駆けた。
　肩に視線を移すと、
「にゃぁ♪」
　金眼の悪戯っ子が可愛く鳴いた。

　区間賞の中身は爺たちの着ぐるみをきたネコのぬいぐるみ。
　４体有る。しかも色は綺麗にあの爺ズたちと同じ色だ。
　今日肩を揉んだ老人たちを思い出す。
　きっと今日の勝利の女神はあの４人だったに違いない――今ならそう思える気がした。
　……断じてツッコミを入れてはいけない！

「みんな、ありがとなー！」
　
　檸檬の大きな声は、皆の拍手が混じってより大きな音となった。

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