恵方巻かれレース！｜リアクション

恵方巻かれレース！

◎決着マキ～♪

「よっしゃ最後の直進や。ニトロエンジン点火！」
　もちろん本当にエンジンがあるわけではありませんが、ちかはその気になっています。
「海苔だけにノリノリや。自慢の簀巻きもキズだらけ。たのむでかわいい相棒よー♪」
　一気に転がってラストスパート！

「優勝は苑下ちか選手だよー、おめでとうございます！」　
「やったでー！」
　観客のの人たちも拍手で迎えます。
　みんなで食べる恵方巻き作りも、仕上げに入っていました。

「最後はもう転がってゴール！」
　猫の猛追をフェイントでかわし、碧南も続いてゴールします。
「２位は羽生碧南選手だよー♪」
「やったあ！」
　極上恵方巻きはゲットできなかったけれど、碧南は心地よい汗と達成感に包まれていました。

「ゴールだ！」
　心身ともに疲労でぐったりしながら、一馬は無事絽紗と共にゴールしました。
「おつかれさまです……大丈夫ですか？」
　疲れぶりに心配する絽紗に、一馬は笑顔で答えます。
「ああ、大丈夫だ……大塚は、大丈夫か。どっか擦れて怪我したりしてねえか？」
「はい、私は大丈夫です。おかげで楽しいレースができました。ありがとうございます」
「あ、ああ……どういたしまして」
「運動したから高峰君もお腹すいたでしょう？　私、町内のみなさんと一緒に恵方巻きを作ってきます」
　マンボウくんが何かアナウンスして気絶していたけれど、二人の耳には入ってきませんでした。

　遅れて、楽しそうな瑠樹とサンマさんもゴールしました。
「楽しかったー！」
「まあ、普段と違う新鮮な景色が見れてよかったな」
　恵方巻きを脱いでいつもの立ちポーズに戻ったサンマさんが言います。
「さあ、恵方巻きができましたよ。どうぞ」
　町のおばさんに恵方巻きを渡された瑠樹が目を輝かせます。
「えっ、恵方巻きもらっていいの！？　それじゃ……いっただっきまーす！」

　表彰台ではちかがリッカルド町長から極上恵方巻きを受け取っています。
「おおきに、いただくで～！」
　一馬のところに、簀巻きに入ったままの恵方巻きを持った絽紗が戻ってきました。
「お待たせしました、どうぞ」
　さっき一本食べたばかりですが、一馬はお腹を空かせていました。
「うまい！　これ、もしかして大塚が作ったのか？」
「ありがとうございます。ええ、あまり運動は得意じゃないけれど、これだけが私の得意分野ですから」
　にっこり微笑んで絽紗が言います。
「今日は本当にありがとう。これからもよろしくおねがいしますね、一馬君。それ、まきまき♪」
　おかわりを作りながら、初めて名前で呼んでくれた絽紗に。
「おっ……、……おう。……あんがとな」
　一馬は言葉少なに答えました。
　なんだか胸がいっぱいな気がして、余計な言葉が出てきそうで。
（……顔、赤くねえだろうな）

「マキマキ。それじゃまた来年マキ～」
　恵方巻きの妖精は楽しそうな人々を眺めながら、静かに消えていきました。

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