恵方巻かれレース！｜リアクション

恵方巻かれレース！

「中にはカップルの出場者もいるねえ。どうやらペア部門の出場者だねえ～」
　マンボウくんの視線の先には、大塚絽紗と高峰一馬の初々しい姿がありました。

「ペアで参加するマキね？」
「はい。いろいろあって、お誘いすることになりました……」
　蚕ですら可愛いといって育てている絽紗は、恵方巻き妖精にごく当たり前のように接していました。
　同級生の、筋肉質で爽やかな一馬の隣で、絽紗は少し恥ずかしそうに長いまつげを伏せました。
「なぜかといえば、ルールでほふく前進がありますよね？　高峰君は、自衛官を目指しているから、もしかしたら、得意かな、と思ったので」
　親切な高峰君ならお願いしても嫌がりはしないのではないか、と思えたためもあります。
　誘われた一馬は鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしましたが、結局ＯＫしたのでした。
「そりゃ、まーな。練習したことはあるぜ？　小さい頃は親父と競争したりしたしな、懐かしい」　
　そう言いながら内心焦りまくっています。
（まさかな、って思ってたけど……これペアって一緒に巻かれるのかよ！）
　もちろん一馬も嫌ではないのですが……若い男女がペアで巻かれるのって、とっても恥ずかしいことになるのではないでしょうか。
「よろしくお願いします。でも、一緒に巻かれるのはちょっと恥ずかしいですねぇ。ほら、さすがに背中合わせでも……寒い日ならおしくらまんじゅうみたいで悪くはないんですけどね」
　係の人が二人用の恵方巻きの筒を持ってきてくれたのを見て、絽紗はちょっと恥ずかしそうに微笑みました。
（いいのか！？　いや、やるしかねえのか！？）
　一馬が焦りを顔に出すまいとする中、二人は背中合わせに巻き巻きされました。
（ちょっと気恥ずかしいけれど、妖精さんのおかげですね）
　と思っている絽紗。
　しかし一馬のほうはそれどころではありません。
（と、とりあえずなんとか……向かい合わせにはならなくて済んだな！　背中合わせならまだなんとか……なんとかってなんだ、落ち着け俺）
　心臓の鼓動の大きさが伝わらないか、そう思うとさらにドキドキして余計なことを思い出してしまいます。
（前みたいにうっかり当たったりしちまったら悪いっつーか、あ゛ー）
　うっかり先日当たった大きな胸の柔らかな感触を思い出してしまって、慌てて首を振って頭から振り払います。
（だー！　もうこれとっととゴールして終わらせちまうしかねーな！？！）
「うわあ～、なんだか見てるだけで恥ずかしいよお……きゅう」
　マンボウくん、二人の仲のよさにあてられたかついに気絶してしまいました。
　
　皆がスタートラインに出そろいました。
「それでは位置について、よーい、ドン！」
　マンボウくんもなんとか目を覚まし、町長の合図で、レースが始まりました！
「うわっ、びっくりしたあ……きゅう」
　マンボウくんはまた気絶してしまいましたが、スタートは順調です……ごく一部を除いては。

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