寝子高七不思議シリーズ：キサラギ君｜リアクション

寝子高七不思議シリーズ：キサラギ君

■調査

「俺じゃねえからな」

　梢からメッセージを受け取った如月庚は落ち着いた声で否定した。
　しかし穏やかな心境でないのは額に浮かんだ青筋からも明らか。

「碌でもねぇ怪奇現象だが放っておいても危なさそうだしな……やれやれ。
ぶっころしてやる」
「どーどー、落ち着いてください、らぎらぎくん。キサラギくんはもう死んでいる」

　殺意ＭＡＸハートな庚を宥めるのは同じクラスの薄野五月。
　彼女もまたキサラギくんの噂を聞いて調査に乗り出した一人だ。

「いつから世紀末覇者になったんだ蕎麦姉。大体なんだその呼び名は」
「キサラギくんとの差別化を図ろうと思いまして」

　そんなやりとりをしつつも、二人は先輩や長年寝子高で勤務している古株の学校関係者を中心にそこそこ真面目に聞き込み調査をしていった。
　結果、キサラギくんの噂で新たに分かったことがある。

　まずキサラギくんの出現時間は平日放課後から閉門時間まで。休日や、夜間の見回り時での目撃情報は出ていない。
　次に、出現する下駄箱は完全にランダムで、女子やもてそうな男子の下駄箱であれば学年などは関係ない。
　三つめ、誰かと一緒にいて襲われたという話は聞かない。被害者は常に一人の時を狙われている。

「先生に昔の卒業アルバム見せて貰いましたけど、流石に60年分全部は見きれませんでしたねー……」
「ああ、でも事故死したキサラギって奴は聞いたことないって先生らは言ってたな」　

　過去に事故で亡くなった、キサラギという男子生徒は寝子高には存在しない。
　
　その事実の裏付けを校外で行っていた者が存在した。
　学校を休んでがっちり調査にあたっていた、桜庭円である。

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