寝子高七不思議シリーズ：キサラギ君｜リアクション

寝子高七不思議シリーズ：キサラギ君

■後日談

　事件収束から数日後。

　八神修は『キサラギくん』事件の顛末を一部ぼかした形で学校新聞に取り上げた。
　なにしろ関係者の一人の梅月は存命かつ購買に勤務しているし、衣更月雄も亡くなっているとはいえ神魂に翻弄された被害者なのだ。
　尊厳は守らねばならない。

「……寒いと思ったら、降り始めたか」

　PC用眼鏡を外して席を立った修は、雪がちらつき始めた外を眺めながらホットチョコレートの入ったカップに口を付けた。
　雪がちらつく中に購買の梅月初花、それと共に事件解決にあたった薄野五月や桜庭円、跡野茉莉の姿が見えた。
　手には花束と綺麗にラッピングされた箱らしきものが見える。
　きっと、彼の下駄箱に供えに行くのだろう。

「もう、寂しくないな」

　顔を綻ばせ、修は彼女達の後姿を見送った。

　仙藤紫は帰り際、花束とチョコレートらしき箱を抱えた一団と擦れ違った。
　彼女らの行き先、目的は明らかだ。
　自分も一緒に事件に巻き込まれた口だが、そこまで付き合うつもりはなかった。
　軽い会釈だけで済ませ、雪が酷くなる前に帰路を急ぐ。
　重い灰色の空が、妙に胸をざわつかせた。

（彼は何故あの時発作を起こしてしまったのか）

　実は紫の頭の片隅には、皆には言えなかった一つの仄暗い推論が居座っている。

　衣更月雄は心臓が弱かった。
　発作、重篤な不整脈を起こす原因は様々あるが、強い精神的ショックもその一つだ。
　例えば……驚き。

（自分には全く無関係のイベントで、貰えるはずがないと強く思っていたものが不意に目の前に現れたら……？）

　喜ぶより前に、彼は酷く驚いたはずだ。
　そして、それが不幸にも発作のトリガーになってしまったのでは？
　もし、そうだとしたら。

「……怖い話ね」

　

　

　真実は怪談よりも奇なり、酷なり。

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あとがき

担当マスター：本条小鹿
ファンレターはマスターページから！

参加者の皆さまと、此処まで目を通してくださった皆さま、どうもありがとうございます。
大分お待たせしてしまい恐縮ですが、少しでも楽しんでいただけたのなら幸いです。

今回はPC目線とPL目線では味わいが少し異なる締め方をさせて頂きました。
チョコレートはただ甘いだけではなく、ほろ苦さがあってこそチョコレートであるように、
怪談もすっぱり解決するより、余韻があった方がらしいと思いまして。
ここから読み始めた方々には本文の方をご確認の上、「ああ」と納得していただけると嬉しいです。

それでは、また次のシナリオでお会いしましょう。

本条小鹿でした。

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