魔界からの試練　――たゆたう混沌姫ミサラトテップ――｜リアクション

魔界からの試練　――たゆたう混沌姫ミサラトテップ――

結：そして日常へ

　戦いが終り、自室に戻った戌貝二一は、早速原稿に取り掛かっていた。ミサラトテップとの戦いで見る事が出来た触手技の数々……。それを喰らい、苦悶し艶っぽい仕草を見せる登場人物達を巧みに描いていった彼女は、２、３日のうちに原稿を仕上げる事が出来た。
　後に触手好きにはたまらない作品として好評となる事など、この時はちっとも知る由もなく……。
「あぁ、よかったわぁ～♪　ミサラトテップ様の触手、最っ高♪」
　とこんな具合で原稿に励んでいた。

　桜庭円は何気なく拳を見、嬉しそうに口元を綻ばせる。
（やっぱり、愉しい）
　拳の遣り取り……もとい、身体全体を使っての戦いが、愉しくてしょうがない。確かにボクシングも楽しいが、それとは違う爽快感がある。
　その時の事を思い出しながらパソコンのモニターを見れば、一通のメールが届いていた。
「あれ？」
　不思議に思いながら送り主を見れば、屋敷野梢であった。内容は、先ほどのレイドの事。その他、拳闘士でプレイする事に関してや『胡蝶拳』など２人がつかったスキルに関する記事のアドレスだった。

（なんだか、話が合いそうな気がします）
　メールを送った梢は、『SOC』のホームページ内にある特殊戦闘イベントのページを見ていた。そこには、自分達の戦いが最後のミサラトテップ戦である事や、特にどんなキャラクターが活躍したか、が記載されていた。
（もしかして、コズエル戦の時も……）
　気になってみてみたら案の定、コズエル戦のラストレイドも記事になっている。その時の映像を見、色々思い出しては苦笑する梢なのだった。

＊　＊　＊　＊　＊　

『終わったか……』　
『混沌姫は相変わらずですね。さて、私はどうしましょうか……』
『おーっと、次はこっちだ。そういう約束だろう？』
『心得ていますよ。正し、貴方の場合は聊か上品過ぎるような気もしますが』
『そうか？　少しばかり手荒く行くつもりだけど？』
『仕方ありませんね。では、混沌姫のようにやり過ぎないように』
『解ってるって！』
『油断してはなりません。彼らの強さは本物ですよ』
『わかっているさ。コズエル戦も、この戦いも見ている。次こそは勝たせてもらうぜ！』

『はぁ……。ミサトラテップ、あとでお話があります。同じ魔侯爵として、ね？』

＊　＊　＊　＊　＊

　数日後、サキリ・デイジーカッターは１人帰宅しようとしていた。すると偶然にも朝野未沙と出くわす。
「あら、今帰りなの？」
「ああ。先生の都合で部活が休みなんだ」
　他愛も無い会話をしつつ靴を履き、２人でなんとなく歩く。そうしながらも互いにゲームでの事は憶えているわけで、微妙な空気になった。
「サキリさん」
「何？」
　不意に未沙が名を呼び、サキリは不思議そうに止まる。と、未沙はくすっ、と笑って
「あの言葉、結構ここに効いたかもね」
　と言った。
「……他言無用でたのむよ」
　サキリは苦笑してこめかみをかく。

　でもね、朝野。……おっぱいを揉むという行為は、
　君が本気で好きになった人だけにするべきだよ。
　君の触手は、その為にあるんだと僕は思う。
　
　戦いの最中放たれた言葉。それを未沙は思い出していた。サキリが僅かに苦笑を強めていると、元気娘の後木真央が駆けてくる。
「ん？　サキリちゃんどーしたのだ？」
「ちょっと、ね」
　真央の問いかけに、サキリは小さな微笑で返す。未沙はそんな彼の言動にくすっ、と笑った。

　ちなみに。
　旅鴉月詠は、戦いの最中捕まった面々を撮影していた。
（うん、案外よく取れている）
　スクリーンショットをあの状況でよく撮ったな、と思うだろうが、ものすごく鮮明に撮れているのだ。
「うん、思い出プライスレス、だな」
　月詠はどこか一仕事終えた、とでもいうような顔でそのスクリーンショットを見、少し満足げな笑みを浮かべるのだった。

　そのスクリーンショットは希望者に配布された……とも、未沙に進呈された、とも言われている。

（終）

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