【球技大会】テニスの部（白猫組サイド） -後半-｜リアクション

【球技大会】テニスの部（白猫組サイド） -後半-

○第４試合　三ヶ島・森vs浮舟・桃川○

「さて森くん、我々にはどうやらもう後がないらしい」
第４試合開始前。
先の試合結果を受けて作戦会議をするために、葵は準備運動に余念がない蓮へと近づいた。
「ああ、葵さん。お疲れ様です」
蓮は律儀にぺこりと頭を下げた。
「それで作戦会議、というわけですか」
「うん、そうなんだよー」
頷く葵の口調からはあまり緊張感を感じない。
自分たちの敗北即ち黒猫組の敗北というこの状況下でこうまで落ち着いていられる葵に、蓮は内心感心してしまう。
「しかし安心したまえ森くん。こんなこともあろうかと、私が編み出した超必殺フォーメーションを今から伝授してあげよう！」
「超必殺フォーメーション……！」
そう言って不敵に笑う葵に、蓮は期待の眼差しを向けている。
「よいか森くん、我々はインペリアルクロスという陣形で戦う。防御力の高い森くんが前衛、両脇を私と森くんが固める。君は私の後ろに立つ。君のポジションが一番安全だ。安心して戦いたまえ」
「ダブルスという概念を超越してますが！？　というか私三人もいますよ！？」
「む、こうていである私に歯向かうのかなー？　まったく、世界にこうていは私一人だと言うのに……」
「今しがた自分で二人挙げてましたよね」
蓮はふう、とためいきをひとつついた。
「葵さんが何を言っているのかは分かりかねますが、とりあえずテニスの枠に収めた作戦を提案していただければありがたいです」
「いいですとも！」
結局二人は雁行陣をとることになった。

開始直前、四人はネットを挟んで向かいあっていた。
一通りのあいさつを終えると、圭花はそのまま何も言わずに自分のポジションへと向かう。
久雨もそれを追うようにして葵たちへ背中を向けた。
「さて、それじゃあ早速正念場だねー、蓮君」
「そうですね葵さん。頑張って次につなげましょう」
意気込む二人を見て、圭花は我知らずふん、と鼻を鳴らす。
耳聡くそれを聞きつけた葵は、なにやら不機嫌そうな圭花へ視線を送りにやにやしていた。
葵の視線に気がついた圭花はぴくりと眉をつり上げる。
「……何？」
「んー？　いやなに」
葵はひらひらと手を振りながらわずかに唇を持ち上げて言った。
「なにか不満でもあるのかと思ったんだよー」
「気にしないでもらえるとありがたいわね」
内心を見透かすような葵の台詞に、圭花は少し苛立ったような声を上げる。
「ふうん、そうかい」
葵も必要以上に立ち入ろうとはせず、すんなり引き下がった。
「『いつもの』ってところかなー」
「……そうよ」
葵の言う『いつもの』とは普段圭花が取っているシニカルな物言いのことだろう。
「だから放っておいて頂戴。ほら、もう始まるわ」
そう言って圭花は葵を促す。
「どうかしたのか、圭花」
葵と話し込んで動かない圭花を心配して久雨がやってきた。
「……なんでもないわ。大丈夫よ、浮舟さん」
「ふむ、じゃあ行こうか。今日は頼むぞ、圭花」
「ま、出来るだけ頑張るわ」
やる気満々の久雨に、圭花は気のない返事を返すのだった。