紅葉狩りと芋煮会、再び♪｜リアクション

紅葉狩りと芋煮会、再び♪

☆芋煮会準備

「芋煮会？」
　学校から帰った梓智依子は、祖父母からその話を聞きました。
「町内会で芋煮会をするのね、楓が喜びそう」
「そうなんだよ。人手不足なんで私たちも手伝いをすることになってる」
「それはちょっと大変そうね……私も手伝うわ」
「いいのかい？　助かるよ」
　智依子は常々思います。
　シングルマザーの自分が３年遅れで高校に通ったり、バイトしたりしながら余裕のある子育てをしていられるのは、地主として経済的な余裕のある祖父母という存在があればこそ、そうでなければ中絶か、出産後に養子か里親に出すしかなかったはずだと。
「ママー、いもにかいたのしみだね」
　５歳になる娘の楓が飛びついてきました。
「そうね」
　楓は特に好奇心旺盛な子で、そのため時折大変なことになってしまいそうなことがあります。
　ハラハラさせられるけど、よほどのことがない限りは無理に押さえつけるつもりはありません。
（楓に会えて本当に良かった）
　だから少しでも恩を返すために、可能な限りバイトして家にお金を入れていますが。
　楓の喜ぶ顔が見られると思うと、芋煮会の手伝いもやりがいがあります。

「行く！　やっぱり秋は芋煮会よね」
　寝子高２年の楡宮遠海は、芋煮会の話を聞いた瞬間に即参加決定の返事をしました。
「遠海ならそう言うと思った」
　中学時代の同級生、星野アカリはその答えに笑みを見せました。
「軽音部でハードな練習をしているから……そのうえアカリたちとバンドをやっているから、より一層お腹がすくのよね」
　そう語る遠海ですが。
「その理由じゃもはや説明がつかないと思うけど」
　遠海の謎の食欲魔人ぶりを、アカリはよく知っていました。
「みんなで一緒に行こうよ、遠海はどうせ道に迷うでしょ」　
「助かるわ。よろしく」
　遠海の宿痾ともいうべき方向音痴のことも、わかっていてくれるのは友人ならではでした。

　
　寝子島町役場勤務の勤務の三折部朝衣は、昨年は町役場主催の芋煮会で大忙しでした。
「今年は町内会主催なのね？　ならあたしが出る幕はないかな」
　今年から町長秘書でもあることだし……と思っていたのですが。
「一つお願いしますよ」
　町内会の人が、中沢リッカルド町長の元へやってきて頭を下げました。
「町内会だけでは大変ですよね。わかりました。三折部くん、君は去年も芋煮会で活躍してくれたよね。手伝ってあげてくれるかい？」
「えっ？」
　笑顔で町長に言われては、断れるわけもありません。
　結局去年と同様、場所確保やら道具や機材や食材の準備やらに追われることになったのでした。

「去年とほぼ同じパターンだけど、幸いというか、忙しくても遥人に会えないことはないからよかったわ」
　朝衣は今年の１０月から恋人──改め、婚約者となった住沢遥人と結婚を前提に同棲を始めたので、ＳＮＳでしか会えないということはなくなったのです。
「大変そうだね。僕も当日は行くから、手伝えることは言ってよ」
「ありがとう。そう言ってもらえると心強いわ」
　ちょっと愚痴をこぼしたりしつつ、遥人に励まされつつ何とか一週間を乗り切ったのでした。

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