紅葉狩りと芋煮会、再び♪｜リアクション

紅葉狩りと芋煮会、再び♪

☆当日準備

「いいお天気で良かった」
　もうすぐ冬なのに暑くて、朝衣はＴシャツとジーンズ姿でも全然寒くありませんでした。
　前日までいろいろ準備を進めてきましたが何しろ当日も人手不足なので、食材の下ごしらえ、芋を煮たり、食器類の洗い物をしたり、のんびりしている暇はないのです。
（でも油断してると汗が乾いて寒くなるので注意しなきゃ）

　智依子も会場の設営を手伝い、その後は朝衣に声をかけられ、食材を食べやすいサイズに刻んだりといった作業を手際よくこなしていました。
（楓、大丈夫みたいね）
　賑やかな笑い声が聞こえてきて、離れたところにいる楓の様子をときどき伺います。
　幸い、寝子高の同級生の何人かが楓の相手をしてくれていました。
　何度か連れてきたことがあり、楓はすっかり同級生たちのアイドル状態となっています。
　
「何を手伝えばいいのかな……」
　寝子高1年の月原想花がみんなの様子をおどおどしながら眺め、そうつぶやくと。
「あ、里芋切るのお願いできますか？」
「……あっ、はい」
　朝衣が声をかけてくれて里芋を受け取り、ほっとしながら切り始めました。
　想花はオンボロな猫鳴館の住人です。
　寮生たちはこういうイベントに目がありません。
　何しろタダ飯を食う絶好の機会だし、そうでなくてもお祭りネタは大歓迎というわけです。
　想花は自分からイベントに顔を出すタイプではないのですが、なぜか動員されていました。
　紫地にアメコミのヴィラン風のキャラが凶悪な笑みを浮かべているロングＴにカーゴパンツと動きやすい服装で、食材を切ったり、大きな鍋の中に投入したりといったことを手伝っています。
　ここ最近は黒白滴の件と、自分が封印していた過去の記憶を思い出してしまい、気分が沈みがちだった想花。
（先輩が強引にぼくを芋煮会に誘って……やっぱり、顔に出てたんだろうな）
　仕方なく出かけてきたはずの想花ですが、動き出してみると意外なことに、なんとなく気が軽くなったようでした。
「里芋、切れました」
「ありがとう。それじゃ、こっちの鍋に入れてくれる？」
「はい……」
　言われるとおり大きな鍋の中に里芋を投入しながら、想花は思います。
（暑いなあ……湯気で眼鏡が曇りそう）

「あ、そろそろ交代の時間ね」
　朝衣が腕時計を見た時。
「朝衣」
　呼ぶ声がして、はじかれるようにそちらを見れば、そこには遥人の笑顔がありました。
「来てくれたの？」
「ああ、交代の時間だろ？」
「そうね、ちょっと待ってて」　
　次の担当に後を任せた朝衣は、エプロンを外してダウンジャケットを上にはおり、足取り軽く遥人の元へ向かうのでした。

　

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