紅葉狩りと芋煮会、再び♪｜リアクション

紅葉狩りと芋煮会、再び♪

☆芋煮を食べよう♪

「ママー！　おかえり」
　手伝いを終えた智依子が娘の楓の元へ戻り、いよいよ芋煮を食べ始めます。
　智依子は軟らかく煮た芋を選んで楓によそってあげました。
「熱いから気をつけるのよ」
「はーい」
　頷いた楓は、小さな口をすぼめて芋を息を吹きかけ、
「ふう、ふう……」
　と声に出すのでした。
　その様子の愛らしさに同級生は、
「かわいい！」
　と騒ぎ、祖父母は眼福といった表情。
　智依子はスマホを取り出し食べるところを撮影するのでした。

「私も食べようかな」
　そう言った智依子に、
「あついからきをつけてね」
　おませな口調で楓が言い。
　周囲はますます和やかな笑顔になるのでした。

　想花は煮える鍋の前に立って、参加者に芋煮をよそっていました。
（滅茶苦茶暑い。まるで夏に逆戻りしたみたい）
　眼鏡が曇ってきて、想花は焦りました。
「これじゃ前が見えない……こういう時眼鏡は不便だな」
　コンタクトにしようかと考えたこともありましたが、目にレンズを入れるなんて想像しただけで怖くて、実行できなかったのでした。
「すみません、眼鏡預かってもらえますか」
　近くの女性にお願いし、眼鏡をはずすと。
　想花の顔を見て、並んでいたおじさんが目を見張ったのが裸眼でもわかりました。
（えっ、僕の顔何かついてる？　……美人じゃないのはわかってるけど、そんなに変かなあ……）
　眼鏡を取った顔は綺麗めな顔立ちの想花ですが、わかっている人なら眼鏡を掛けたら５割増しの美人、だと言うでしょう。
　ですが、劣等感の塊の想花はそのことに気づけていませんでした。
（……気にしないことにしよう。幸い手元は見えるから作業に支障はないや）
　自分の仕事に専念し、並んだ人たちに次々と芋煮をよそっていくのでした。
（あとどれくらいしたら食べられるかなあ……）

「おつかれさまです。交代です。芋煮、いっぱい食べてくださいね」
　そう声をかけられた途端。
　きゅるる……
　お腹の鳴る音と共に強烈に空腹なのを感じて、想花は顔を赤らめました。
　賑やかな会場でその音は誰にも聞こえなかったのですが。
（うわ、恥ずかしい……）
　想花は器に思い切り多めに芋煮を取り、おにぎりを受け取ってそそくさと会場の隅に移動しました。
「美味しい……」
　すきっ腹に強烈に効くなあ、と思いながら芋煮をかきこむのでした。

「やっぱり苦労した後の芋煮は格別だわ」
　朝衣は満足そうに芋煮を食べ。
「たまにはいいね」　
　遥人も頷きました。
　自分たちで探したいろんな食材が芋煮の味を引き立て、ただ料理するのとは違う満足感があるような気がするのでした。
「ごちそうさまでした。これで片付けも頑張れそう」　
「ああ、みんなでやればあっという間だよ」　

「美味しかったね」
「うん、美味しかったし楽しかった」
　遠海にとって、美味しいものを食べながらメンバーと親睦を深め合うこともできたので、有意義な一日になりました。
「それじゃ、またね」
「……遠海、そっち逆方向だから」
　帰ろうとした遠海を見てアカリが笑います。
「ちゃんと送るから、無理しないの」
「ありがとう、それじゃお願い」

　食材もほとんど無駄になることもなく、皆が笑顔になれるイベントとして芋煮会は成功を収めたのでした。

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