地獄めぐリゾート　in 魔界｜リアクション

地獄めぐリゾート　in 魔界

★リゾートの楽しみ方

「マジ地獄とリゾート、どっちかを選べるんですって？」
　謎の声の説明に真境名アリサは目を点にした。
（マジな地獄に興味がないわけではないけど……やっぱやめとくわ）
「ビーチに行くなら、やはり着て行くのは水着でしょ」
　と思ったとたん、アリサは自分が際どいデザインのビキニを完璧に着こなしていることに気づいた。
　胸が大きく妖艶なアリサは、水着ガールズバー「ジュエル」にキャストとして勤めている。
　セクシーな水着は着慣れている上、日頃からスタイルには気を使っている。
　悪魔たちの視線が釘付けになるのも無理からぬことだった。
「お嬢さん、どうぞ」
　一人の悪魔が血のような色の液体に満たされたグラスを差し出してきた。
「ありがとう」
　礼を言って受け取ると、甘い香りがする。
　何を要求するわけでもないらしい悪魔の様子に、悪魔と言っても全然怖くない、とアリサは思う。
　面倒な客の相手をするよりよほど気楽だ。
　さっそく喉を潤した。甘くて口当たりがいいから何杯でも行けそうだ。
（でもあまり飲み過ぎて酔っ払ってもつまらない──）
　職業柄、酒は強い方だが、アリサは思う。
　こんな珍しいリゾートを楽しむのに、酔って忘れてしまってはつまらない。
　飲み干して目を上げると、角の生えた猫がいた。
「うわあ、凶悪なほどかわいい！」
　手を伸ばしても逃げずに喉を鳴らしてもふらせてくれる。
「素敵なもふり心地だわ。一匹くらい連れて帰りたいけど、さすがに無理だろうな」
　スマホがあったら自撮りで猫と一緒に撮影したのに、と残念がる。

「次は何をしようかな……」
　存分に猫をもふったあと、適当にビーチを歩いていると、美男二人美女一人のセクシー悪魔たちがやってきた。
　一人は手に赤いビーチバレーを持っている。
「そこのセクシーな彼女、一緒にビーチバレーしない？」
　セクシーな美男悪魔が声をかけてくる。
「地獄でビーチバレーとか面白そうね。いいわよ」
　そんな気さくなノリで陽気に答えて、アリサはビーチバレーの試合を始めたのだった。
「変わった形のネットね」
　と思ってよく見れば、クモの巣だった。
「え、切れるでしょ？」
「大丈夫、魔界の蜘蛛の糸はとても丈夫なのさ」　
　アリサとペアを組んだ美形悪魔が説明してくれた。
　その言葉通り、ネットはしなやかにビーチボールを跳ね返す。
　アリサのパートナーが一点を先取した。
「なかなかやるわね」
　相手側の反撃、際どいラインをついてきたサーブはアリサが返した。
「君もね」
　悪魔の男のウィンクに、
（けっこう息が合ってるかも？）
　と思えてしまうアリサだった。

　試合はアリサたちの快勝だった。相手チームの二人は、手を振ってどこかへ行ってしまった。
「楽しかったわ、いい汗かいた」
　残っていたパートナーにアリサが言うと、
「俺はまだ物足りないな」
　美形悪魔はアリサの目を覗き込み、腰に手を回してきた。
「君とならもっといい汗がかけそうだ」
　なんとなく、こうなる気がしてた。
　そう囁いたのは、あるいは、アリサの中に潜む悪魔だったろうか。

　後腐れのない身体だけの関係。
　確かに、ビーチバレー以上にいい汗をかけたかもしれない。
　名もしれぬ悪魔との情事のあとの気だるい空気の中で、アリサはポツリと言った。
「……地獄に落ちるのも悪くないかも」
　　

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