地獄めぐリゾート　in 魔界｜リアクション

地獄めぐリゾート　in 魔界

★角の生えた猫たち

「ここ……魔界？　天界は行った事あるけど魔界に来るのは初めて」
　恵御納夏朝は突然の事態に戸惑いつつ、友人の八神修に話しかけた。
「悪魔の羽根が生えてる。本当に魔界なんだ……」
　背中に違和感を感じて見れば、その羽根は自分の意思で動かすことができた。
「今回はゆっくりできそうだな」
　修は双眼鏡で周囲を観察していた。
　ビーチでは黒い羽根や尻尾を持つ美男美女の悪魔たちが、血のような赤い飲み物を飲んだり客を誘ったりしている。
「魔界に地獄があるって、初めて知った……かも……？」
　驚く夏朝だが、修はクールなものだ。
「人間界の某巨大遊園地を思い出すな。アトラクションも結構あるみたいだ。何処に行きたい？」
　平然と事態を受け入れる修の様子を見て、夏朝も落ち着いてきたようだ。
「一風変わったテーマパークだね。何から楽しもうかな………って、あれ？」
　夏朝は、目ざとくもふもふの生き物をを見つけた。
　見慣れているその生き物は、だが少しだけ夏朝の知っているそれと違っている。
「角の生えた猫さんだ……可愛い！」
「この世界の猫も可愛いな」
　修は早速猫に近づき、通り掛かった人……いや、悪魔に聞いてみた。
「これは猫かい？　なんという種族かな？」
「マネコだよ」
　と悪魔は答えた。
「魔界の猫ということかな」
　夏朝はさっそくなでなで、もふもふしながら話しかける。
「こんにちは、魔猫さんたち。人の言葉はしゃべれるのかな？」
「ニャー」
　屈託なく魔猫は鳴いた。人懐っこいようだ。
　修は優しく魔猫を撫でながら観察する。
「地獄だからか黒っぽい毛の猫が多いな。角は一本の者と二本の者がいるんだな」　
　一本の猫は頭の真ん中から、二本の猫は耳の後ろに一本ずつ生えている。
「翼はないようだな。四足歩行だ」
　体のしくみを観察しながら、修は魔猫たちの反応も観察している。知能はどうか、人間語は解するのか。
「撫でて気持ちいい部分はどこかな。人間界の猫と同じかな……可愛いなあ」
「ふわふわもふもふで、にくきゅうぷにぷにだね。角、触ってもいい？」
　夏朝が角を触るが、魔猫たちは嫌がる様子はない。
　角の付け根を撫でてやると気持ちよさそうだ。
「好物は何かな」
　と鞄から餌を探そうとした修だが、近くの悪魔が声をかけてきた。
「餌ならここにあるから、食べさせてやりなよ」　
「ありがとう」
　受け取った餌は、ササミだにゃんとかカリカリとかマタタビのように見えた。
　魔猫たちは美味しそうに喉を鳴らして食べている。
「八神君は魔猫さん達に好かれてるね。羨ましい……魔猫さん……！」
　二人はしばらくもふ撫で至福の時間を楽しんだ。
　　
「猫達に此処を案内して貰おう」
　修が言うと、何匹かが先に立って歩き始めた。
「何所に連れて行ってくれるのかな。乗物とか借りられたらそれに乗っていきたいんだが」
　修の言葉に、二本角の白と黒の猫が頷いたようだった。

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