地獄めぐリゾート　in 魔界｜リアクション

地獄めぐリゾート　in 魔界

★ジェットコースターから見下ろすマジ地獄

　月詠と別れてしばらく歩くと、ジェットコースター乗り場があった。
　魔猫が修の顔を見て、みゃあ、と鳴く。
「これに乗りたいのか？　しょうがないな、券を買ってやろう」
　修は財布を取り出した。
「えっと、人間のお金使えるのかな……物々交換できる？」
　夏朝は係員らしき悪魔に尋ね、カバンの中を探す。
（ねこシール、交換に使えるかな……持ち込めてるかな）
　だが悪魔はにこやかに答えた。
「お金はご心配なく。カードレスで後払いです」
「そういうものなの……？」
「地獄なら個人情報を集める手間はなさそうだしな」　
　修はジェットコースターへ向き直る。
「恵御納も乗るだろ？」
「猫さんたちも乗るの？　絶叫系、実は少し怖いけど……意を決して乗るよ」
　修と夏朝、それに魔猫たちを乗せてジェットコースターは走り出した。「八神君はこういうの平気なの？」
　ゆっくり走り出すジェットコースターの中で、気をまぎらわすため、夏朝は修に話しかける。　
「俺？　大体絶叫系がメインだよ。スピード感や体感重力の変化が好きなんだ」
　魔猫を撫でながら修が答える。
「そ、そう……猫さんたちも高いところが好きだし、怖くないよね……」
　そうしているうちに、コースターは一番高いところまで登ってきたようだ。
「あ、魔界と地獄が一望できる」
　怖さを忘れて夏朝は景色を見下ろし、修はデジタルビデオカメラに写真や動画を記録する。
　どうしても目が吸い寄せられてしまう。
　マジ地獄には戦う者たち、串刺しにされる者、業火に焼かれる者……別の意味で絶叫しそうな光景が広がっていた。
「向こうは本当に地獄みたいだね………あっちに向かった人達は大丈……」
　夏朝が級友のサキリの姿を目の端に捕らえ、ドキッとしたその時。
　ジェットコースターが急降下を始めた！
「……あ、あぁぁあぁぁぁぁあぁ！？」
　心配は吹っ飛び、夏朝の絶叫が響き渡った――

「恵御納の叫び声は可愛くてほっこりするな」
　ジェットコースターは無事下に到着し、修は涼しい顔で魔猫たちと共に降りた。
「まだドキドキするよ……そうだ、お土産買えるかな。本当は猫さんたちを連れて帰りたいんだけど……」
　夏朝は名残惜しそうに言う。
「この角は目立つからな……残念だが、人間界には連れて行けないんだ」
「また会えたら、その時も撫でさせてくれると嬉しいー！」
　修と夏朝の言葉に、誰かが答えた。
「そうだね、マネコはきままねこ。気がむいたら」
　予想外のところから聞こえてきた声に、一瞬二人は顔を見合わせ、そして声の主を凝視した。
「魔猫さん！」
「しゃべれたんだな」
　さっきまでみゃあみゃあと猫の鳴き声をあげるだけだった二本角の白黒のマネコが、しれっと人語を話していた。
「角を隠すくらいは簡単だけど、マネコは人に飼われはしない。気が向いたらまた会おう」
　そして、いずこかへ走り去っていく。
「またね、魔猫さん……」
　その後ろ姿に向けて、夏朝は手を振った。
　

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