モノローグの空｜リアクション

モノローグの空

【楢木春彦の場合】

「おっつかれー！」
「お？　よおー！」
　おー、良いＭＴＢ乗ってんなぁあいつ。俺も自転車でも乗ってくりゃ良かった……って、この坂道登るのはキツそーだ。
　ああ、バイクがありゃあなぁ……！　やっぱこの前免許試験落っこちたの、痛かったぜー……くっそー、次は絶対合格してやるからな！
　でもまぁ、たまにはこうやって九夜山を散歩すんのも、悪くねぇよな。まだ寒ぃ時期だけど、山登ってりゃすぐ暑くなるし、景色が良いから気分も良い。うおー、寝子高があんなに小さく見えるぜっ。
　よーし、あとちょっとだな。頑張って登るかー！

　おっ、見えた見えた！　山ん中に、あの唐突なほったて小屋。
　じいさんたち、元気してっかな？　また妙なモン作ってねぇだろーな。気になって、たまにこうやって見に来ちまうんだよなー。
　寝子島少年科学団かー……少年ってくらいだから、じいさんたち、ガキの頃からずーっとああやって、ヘンな発明作ったりトラブル起こしたりしてんのかな。
　……っつーかあの機械、どんなヤベェ作り方したらあんなコトになるんだ？　あれってやっぱ、じいさんたちの腕がスゲェのかなぁ？　それとも、神魂とかも関係あんのかなー。
　じいさんたちも、もれいびだったりすんのかな……？
　気になるけど、でも……まぁ、そーだな。じいさんたちはなんだかんだ、いっつも楽しそーにしてる。お互いジジイ呼ばわりしながら、愛称で呼び合ったりして、仲良さそーだよな。見てて面白ぇし、いろいろメーワクかけられんのも、俺はそんなに嫌じゃない。
　ほっとけねぇっつーか、憎めねぇっつーか。俺は好きだな、じいさんたちのコト。だからあのまま、何にも変わんねぇまんま、ずーっと元気に笑っててくれっと……いーよな。
　そーだ、たまには発明の手伝いでもしてやっかな？　そりゃ、俺には難しいコトわかんねぇし、細けぇ作業とか苦手だケド。リクツを説明されても分かんねぇし、機械なんてもっと分かんねぇけど……あれっ、これ俺いらなくねぇ？
　いやでも、この前みてぇに、実験台になってやるくらいならできっかな？　そりゃ危ねぇ機械もあるケド、悪気はねぇし。たぶん。たまーに良い機械もあるし。それに……じいさんたちのこと、信用してっからな。

「よーっ、じいさんたち！　元気してっかー？」
　小屋の中入ったら、さっそくだ。何だこの、でっけぇ機械……！　コードとか歯車とか剥き出しで作りかけのヤツに、三人して一生懸命、夢中でがちゃがちゃやってる。小柄なアインシュタインさんも、太ったコペルニクスさんも、一番背が高ぇエジソンさんも、俺が入るなりぐりってこっちを見て、すげぇ良い笑顔で、
「おーっ、ちょうど良いとこに来たのう春彦くんよ！」
「もう少しで、新発明が出来上がるところでの」
「試したいかのう？　試したいじゃろ、んん？」
「ナチュラルに実験台にしようとしてんじゃねぇよっ！　まぁ、試すけどよー」
　じいさんたちは相変わらず、この調子だ。大ゲサな機械の名前とか、小難しい説明とか一方的にぺらぺらまくしたてて、俺にはサッパリ、何言ってんのかわかんねぇケド……じいさんたちは、いつも通り。楽しそーだ。
「そういや、じいさんたちよー。少年科学団ってくれぇだから、こういうの、昔からやってんのか？　小せぇ時は、どんな発明してたんだ？」
「おお、よっくぞ聞いてくれた！」
「そいじゃひとつ仕上げがてらに、ワシら栄光の少年科学団、その記念すべき輝かしい発明第一号の話を……」
「なーにが栄光じゃ、お前ら忘れたんか？　あの『人工竜巻発生機』のおかげで、ワシら危うく死にかけたじゃろが」
「なにおう？　あの成功……成功？　があったおかげで、今の科学団があるっちゅうわけで」
「思い出した、お前らあん時、ワシのこと盾にしよったじゃろ。おかげでワシ、木の上まで吹っ飛んで……春彦くんよ、なーにをニヤニヤしとるんじゃ？」
　……やっぱ、相変わらずだ。楽しそーだ！
　じいさんたちの、こんなバカみてぇに元気で、明るいトコ。そういうトコが、きっと俺は、好きなんだ。

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