モノローグの空｜リアクション

モノローグの空

【宇津野京の場合】

「うわぁ……！」
　気ーっ持ち、イイ！
　ツラーイ坂道、うんうん言いながら自転車で登ってきたから、喜びもひとしおーってやつかなぁ？　山の上に吹く風が、汗ばんで髪が張り付いたおでこをびゅーっと撫でていって、すっごく爽快。それにこの、ここから見下ろす寝子島の景色といったら、もう最っ高！
「ふーっ……ちょっと休憩っ」
　二本目のスポーツドリンク、開けちゃおうっと。……ん～～～っ、冷たくて美味しいー！　乾いたノドを潤して、ほーっとひと息。
　さてさて、次はどこへ行こうかな？　九夜山のてっぺんで絶景を堪能したら、次はやっぱり、
「海かな？」
　島の端っこのその向こう、きらきらぴかぴか光ってる青い海があんまり綺麗で。眺めてたら、いてもたってもいられなくなっちゃった。
　よーっし！　思い立ったら、即実行っ！　さっそくＭＴＢにまたがって、登ってきた坂道を、今度はぎゅーんっと急降下！　登りは大変だったけど、その分、この下りの爽快感が楽しみなんだよねっ。
「てーーーいっ！」
　絶妙なスピードコントロールで、カーブをぐいーんっ。坂道の下りって難しいんだよね、スピード出しすぎると曲がれなくなっちゃうし、かといってブレーキをかけすぎると、ブレーキ効かなくなっちゃう。そのさじ加減が、腕の見せドコロ！　って感じかなぁ？
「……あ。おっつかれー！」
「お？　よおー！」
　下から歩いて登ってきた男の子とすれ違いざまに、ご挨拶。ほんのちょっとの触れ合いだけど、こういうところでの突然の出会いっていうのも、何だか良いものだよねっ。
　手を振って見送ったら、何となく良い気分で、思いっきりペダルを踏み込む。ぎゅーんっとスピードアップ！　海まで一直線ーっ！

　一気に山を下ったら、ゆったりペースダウン。
　わ、潮風の良い香り！　山の風も気持ちいいけど、この季節の潮風も、すっごくお気に入りなんだよねっ。
　ゆるやかな風を身体ぜんぶで受けながら、ゆっくりゆっくり、街中を走る。ハイスピードなセクションも楽しいけど、こうやってゆったり、寝子島の人たちの暮らしを眺めながら走るのがまた、イイんだなぁ。これって、ポタリングに通じるものがあるよね。
「あっ！」
　道の脇に見たことないお店を見つけて、きゅきゅっと急停止。
　わぁ、お菓子屋さんだっ！　洋菓子店みたい、色んなケーキとかクッキーとか、色とりどりのマカロンなんかが、いーっぱい並んでる。いいなぁいいなぁ、すっごく綺麗で、楽しそう！　美味しそうっ！
　ケータイ取り出して、メモメモ。今度ゆっくり見にこようっと。
　自転車漕いで島中走り回ってるけど、それでもこうやって、毎日のように新しい発見があるんだ。それが愉しくって、嬉しくって……だから、止められないんだよね♪

　堤防に自転車を止めたら、波の音に耳を澄ませてすこーし、しんみり気分。
　静かで、少しだけ寂しくて、穏やかで、すっごく綺麗。んー、冬の海も、なかなか良いね！
　でもやっぱり、夏の海のほうがもっと好きだけど。夏になったら、海水浴にも行きたいな！　今年は、新しい水着でも買っちゃおうかなぁ？　ああ、今から夏が楽しみ！
「……さーって！」
　季節外れの海を堪能したら、良い時間。そろそろ帰ろっかな？
　今日も思いっきり走って、楽しかったー！　大満足っ。
　でもいくら走っても飽きないのが、寝子島のいいトコロだよね。さあ、明日はどこに行こうかなっ！

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