走れ！リボンだけをその身に巻いて！｜リアクション

走れ！リボンだけをその身に巻いて！

　スタートラインには、絢、碧南、真央、修の他に
　朝野未沙、志波武道、握利平の姿もある。
　
　水色のリボンを胸と腰だけを中心に巻いた、少しエロい装いの絢。
　それと並んでセクシー路線を突っ走る碧南。
　
　そんな2人に比べ、使っているリボンの量が多いためかやや落ち着いて見えるのは未沙。
　リボンが覆っているのは胸部と腰だけではあるのだが、
　何本かのリボンが重なっているために、身体の凹凸が隠れているのだ。
　もっとも未沙にとって自らの見え方などというものは些事にすぎない。
「ズレてきちゃったりしたら、一人でリボンを巻くのは大変だと思うのでお手伝いしたいと思います！」
　ニコニコと愛想を振るう未沙。
　そう。未沙にとってのターゲットとは、他の女の子なのだ。

　そんなアブナイ出場者が隣にいるとは気づいていない真央。
　彼女はまるで祭りで男性が着用するさらしのように腿から腹を1本のリボンで覆い、
　さらに胸元には別のリボンをグルグルと巻いた後、身体の前で蝶結びにしている。
　セクシーというよりは可愛い路線だが、それもまたこんな大会の楽しみの一つだ。

　女性陣に比べ、やや露出が少ない男性チーム。
　目に痛いくらいに目立つ金色のリボンを腕や体に巻いているのは武道だ。
　ブーメラン水着のうえからぐるぐると巻かれた金色のリボン。
「いやぁ盛り上げたくなるじゃないこういうの！」
　カラカラと楽しげに笑う武道に修が冷静に突っ込みを入れる。
「……何というかいつもより露出が減ってるんじゃないか？」
　普段はよく黒いブーメラン水着一丁という姿に脱衣していることを考えれば、修の言い分も最もだ。
　金色のリボンが巻かれた腕をヒラヒラと振って、武道は笑う。
「いいじゃないの。寒いけど応援してくれる皆、そして何より活性化つまりはお祭りと聞いて頑張らないわけがない！」
　露出が増えようが減ろうが、大事なのは観客が盛り上がってくれること。
　そう言いながら武道は、寒さで怪我をしないようにと準備運動に勤しむ。
　けが人が出てしまっては、せっかくのお祭りだって台無しだ。
　あくまで真面目な考えの準備運動だったが、そのキンキラキンの姿はやはりどこか滑稽だった。

　続いて露出が減るのが修である。
　彼の出で立ちは、身体にリボンを巻いてあるというよりはまるで黒いノースリーブのスウエット。
　しかもリボンの端は包帯を止めるときのように折って処理をし、その上に靴下留めに使う糊まで使用している。
　隙がないとはまさにこのことだ。
　だがそれこそが、八神修という男の個性である。

　そして最後。露出こそは少ないもののやたらと目を引くのは利平の姿だ。
　なにゆえに目を引くのか。
　それは利平の姿が、まるっきりミイラのようであるからだ。しかも色は緑。
「腹が冷えちゃいけねーからな」
　どうやら寒さ避けのために全身をリボンで覆うという発想に至ったようではあるが、なかなかのインパクトだ。
「おほっ、なんかリボンの感触がスルスルするぜ。蝶結びじゃ解けるか？　まあ、大丈夫だろ」
　つぶやく利平。
　無事に完走できればいいね。

「俺がこういう競技に参加するのは珍しい？」
　真央の視線を受けた修がそう訊ねる。
　あまり体力のある方でもない修がマラソン大会に出るというのが、真央にとっては不思議だったのだろう。
　だが修としては自分がこの距離を走れるかどうかを試すための出場なのだ。
「俺らしいと思うけどな」
　ふふっと笑う修。
「競争してみるか？」
　修が提案すると、真央と武道が一緒になって頷いた。
「武道ちゃんセンパイや修ちゃん相手でも負けられぬ闘いカムヒアなのだ！」
　熱い真央の宣言。

　そしていよいよスタートの号砲が鳴る！

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