【星幽塔】酒場にて　→飲む　→話す　→外に出る　→脱ぐ｜リアクション

【星幽塔】酒場にて　→飲む　→話す　→外に出る　→脱ぐ

　何だか賑わってきた空き屋通り。ここにも１人、念願の空き屋を手に入れた者がいた。

（うんうん、いいじゃないの）
　家を眺め、朝野未沙は満足そうに頷いた。
　広めの２階建て。最低限の家具は置いてある好物件だ。
　空き屋の交渉もどうなるかと思ったが、たまたま持っていたスルメイカや荒縄やツールボックスを家主に見せ、何とか取りまとめることが出来た。
（特にスルメイカが気に入ってもらえたのよね）
　酒と一緒につまみにすると美味しいと説明した未沙は、今の今まで家主とスルメをつまんでいたのだ。そして１人酒をぐいぐい飲みへべれけになった家主と握手を交わし、ようやくこの空き屋に戻ってこられたのである。
（酔わして契約を結んだ気もするけど……ま、いっか！）
　あくまで前向きな未沙であった。

　家主は掃除などはしなかったのであろう。空き屋の中は埃臭かった。
　未沙は家中の窓を開け、換気をする。家主がランタンと蝋燭を何本か貸してくれたので、それを家のあちこちに置いた。今は黒竜のせいで昼がないため、これらがないと話にならないということだった。
（んー、ベッドとかは大丈夫そうね）
　２階の寝室をチェックし、未沙は１階の調理場の方に回る。
（ライフラインは……あ、水は出るのね）
　蛇口を発見し、捻ってみる。勢いよくではないが、しっかりと水が流れ出した。
（調理は竈……。火の扱いに慣れないとね）
　何から何まで寝子島の生活とは違うこの世界。これから何が起きるかは分からないが、ここが自分の城となるのだ。
「よぉーし、ピカピカに磨き上げちゃうぞ！」
　未沙は腕まくりをして元気よく室内の掃除を始めた。

　一通りの掃除と片付けを終えた時には、未沙は汗だくになっていた。パタパタと胸元に風を入れながら、ふうっと一息つく。
　風呂もこの家にあるにはあったが、薪で湧かさなければ入れない。未沙は買い出しと散策を兼ね、街にある公衆浴場で汗を流すことにした。

「浴場、欲情、公衆欲情～♪」
　浴場に何を期待しているのだろうか。字に起こすとなかなか破廉恥な歌である。未沙はスキップをして公衆欲情……じゃなかった浴場に向かっていた。
（この世界はなかなか美人さんが多くて困っちゃうわ……アラ？）
　未沙の女の子センサーの精度は抜群だ。彼女は人混みの中から見知った顔を見つけ出した。
「梢さん！」
　その声に屋敷野梢が顔を上げた。
「あー、朝野さんだー！」

　一緒にいた壬生由貴奈と共にこの世界でベーカリーをするという梢は、町に買い出しに来たらしい。浴場に行った後買い出しをしようと思っていた未沙は、色々お店の情報を聞く事が出来た。
　またお互い遊びに行く事を約束し、未沙は梢達と別れる。空き屋通りに戻る彼女達に手を振って、また未沙は歩き出した。
（パン屋さんか～。宿屋もあるって梢さん言ってたし、この世界もなかなか住みやすそうだね！）
　うきうきしながら歩いていると、家主に教えてもらった公衆浴場が見えてくる。そこに数名の女の子達が入っていくのが見えた。
（え、ちょっと可愛いじゃない！　獣耳もいいわよね～）
　未沙の目が妖しく輝く。

　興奮している時に水分が身体に付着すると、手足が触手化するろっこん＜あなたの後ろに這い寄る触手＞を持っている未沙。
　―――気をつけろ未沙！　君がろっこんで変身してしまうと魔物扱いされてしまうぞ！