寝子島少年科学団の、バック・トゥ・ザ・クリスマス｜リアクション

寝子島少年科学団の、バック・トゥ・ザ・クリスマス

【ゲットだぜ！】

「は～～～……美律、一生の不覚だったわ～」
　自室にて机に突っ伏して、多喜美律は、ふかぶか～と大きなため息。
　『サンマさんの限定ぬいぐるみが欲しい！』なんて、すっかり諦めて忘れたつもりだった、クリスマスのお願い。それが叶わなかったことをあらためて思い出してしまったのは、先ほど通りがかった公園にて、アヤシイおじいさん三人組が、キミョーな機械を弄りながらに話しかけてきたからです。
「叶わなかったお願い、かぁ……」
　このところは少しずつ知名度も上がり、浸透してきたゲームアプリ『大行進！　サンマさんファミリーズ』。その運営会社が販売したサンマさんのぬいぐるみ、ゲーム内の必殺技のひとつ『サンマさんハリケーン！』を凛々しく繰り出すカッコイイポーズのサンマさんは、その人気ぶりから発売開始と同時に瞬殺、売り切れ！　生粋のサンマさんマニアたる美律ですけれど、残念ながら買い逃してしまい、しょんぼりと肩を落としてしまったのでした。
　その後も、プレゼントキャンペーンに応募してみたり、件の『サンタ★ポスト』に望みを託してはみたものの、どうにもこれが、そう甘くは無いようでして。
「限定品だから、もう再販はしないっていうし……あ～、夢でも良いから欲しいわ～」
　おじいさんたちは、言いました。クリスマスに叶わなかったお願いが、夢の中で叶うのだと。
「ほんとにそんな夢、見られるのかしら？　期待してるからね、おじいちゃんたち……」
　そうこうしているうちに、美律はうとうと。ころんと寝っ転がって、しばしのお昼寝タイム。すやすやすや……。

　玄関の呼び鈴が鳴らされる音で、美律はまどろみの中から顔を上げました。
「ふわぁ……誰かしら？　はーい、今出まーす……ふわわ」
　あくびをしながら出てみると、どうやらお届け物のようです。受け取り先には、美律の名前がありました。
「？　何かしら、このでっかいの」
　やけに大きな箱を受け取り、自室にてぺりぺりと梱包を解いて、ぱかっと蓋を開けてみますと。
　中から現れたのは、
「あっ……！？　こ、これって……！！」
　ずずいと足を踏みしめ、しゅば！　と大きく広げた両手。きりりっと凛々しく吊り上がった眉毛に、ニヒルな口元。つぶらな瞳！
　これこそ紛れも無く、
「『サンファミ限定・サンマさんぬいぐるみ』！？　ウソ、あの時のプレゼントキャンペーン、当たってたの……！？」
　そう、美律が欲しかったあの、限定ぬいぐるみ！　きらりっと見上げたサンマさん・アイに、美律は思わず、むぎゅっ！
「やったーーー、カッコイイサンマさんゲット！！　って、あれ？　お願いが叶ってる？　ってことは、もしかして、これって……」
　おじいさんたちの言葉を思い出して、恐る恐るに自分のほっぺたを指でつまんで……ぎゅむぎゅむ。ぐいーっ。
「……ちゃんと痛い！！　これ、本物だわーやったーーー！！」

　足取り軽く、美律は公園へと向かいます。腕にはもちろん、サンマさんぬいぐるみをむぎゅっ！
　何だか良くは分からないものの、思いもかけない素敵なプレゼントに、頭に浮かんだのはあの、白衣を着たおじいさん三人組です。律儀な美律は、
「お願い叶ったわ、ありがとーってお礼言っとかないとね……あらっ？」
　と、シーサイドタウンの風の原公園へと足を踏み入れた……その、瞬間に。
　ぺかぺか、まぶしく瞬くイルミネーション。流れる季節外れのクリスマスソングに乗って、賑やかにわいわい、踊る人々。それにそれに、
「おっ！　良く来たな～お嬢ちゃん！」
「わぁい、いっぱい楽しんでいってねぇ～♪」
「……えーっ！？　サンマさんに、マンボウくん！？」
　言わずと知れた寝子島観光大使に、先ごろ見習いとしてその仲間入りを果たした彼も……それにたくさんのゆるキャラたちが、勢揃い！　ノリノリで、ダンシング！
「何コレ、クリスマスパーティー？　１月に？　でもでも、すっごく楽しそうっ！！」
　むしろ、こちらが本当のプレゼントであったのかもしれません。にわかに公園を飾る彩りに、美律はわくわく！　満面の笑みを浮かべて、可愛いゆるキャラたちの輪の中へと飛び込んでいきました。

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