冬も深まり寒風吹き荒ぶ、1月のある日の寝子島。
「よっ、生きてっかーじいさんたち?」
コートを着込んだ
楢木 春彦は、降り積もった雪をさくさくと踏みしめながらに九夜山の斜面を登り、その中腹にある掘っ立て小屋を訪ねました。
「あら、いらっしゃいませ♪ おじいさまたち、お客様がいらっしゃいましたよ~?」
扉を開けて出迎えたのは、
先日のちょっとしたゴタゴタを経てこの小屋へと住むこととなった、ロボットメイドさん。
それに、小屋の主である、三人のおじいさんたちです。
「おーっお前さんか、よう来たのう!」
「メイちゃんや、客人に熱い茶をよろしく頼むわい。ちゅうかワシらにも」
「はーいっ」
「春彦くんよ、お前さん丁度イイところに来たのう、ちょいと手伝っちゃあくれんか?」
小柄なリーダーの
アインシュタインさん、恰幅の良い
コペルニクスさん、それに背高ノッポの
エジソンさん。この寒空の下でも、変わらず怪しげな発明に没頭しているであろう彼ら三人組、『
寝子島少年科学団』を心配して、ちょっぴり様子を見に来てみた春彦でしたけれど……どうやら予感的中。冬の冷気漂う小屋の中には、何だか奇妙な発明品がででんと鎮座しておりまして、三人はその開発にかかりきりのようです。
春彦は眉をひそめて、何やらゴテゴテと色々な部品がくっついた台座に乗っている、大きな球体のようなものを見上げます。
「まーた妙なもん作ってんのか、じいさんたち。で、これ何なんだ?」
「うむ、よっくぞ聞いてくれた! これぞ我ら少年科学団の技術力の結晶、その名も! 『
脳波感応式広域幻灯機(ソラリス・コンバーター)』じゃッ!!」
……事情を聞いてみますと、事の起こりは、先日のこと。
「町を歩いとったら、子どもらの話が聞こえてきてのう」
ガチャガチャと機械をいじりながら、コペルニクスさんが語ります。
「ワシらは知らなんだが、先月のクリスマスにゃ、何とか言う店に設置された、『
サンタ★ポスト』ちゅうのに願い事を書いて送るのが、流行っとったそうじゃの?」
「あー、あれな!
俺も書いたぜ、学食がバイキングになんねーかなって」
そう、12月の寝子島には実に、賑やかで楽しい空気が漂いっぱなしでありました。
クリスマスマーケットが開かれたり、こっそり
クリスマスライブが催されたり、
クリスマススペシャルラーメンが振舞われたり。それはもう、素敵なクリスマスだったのです……春彦自身もまた、シーサイドタウンで行われた『
借りサンタ競争』なる競技に出場し、相棒とともに、ホテルビュッフェの食べ放題という豪華賞品をゲットしたりと、なかなかに充実した12月でありました。
ただ……サンタ★ポストへ投函された願いごとは、様々な形で叶ったものもありつつ、残念ながら叶えられなかったお願いもまたありました。
「子どもらがのう、『お願い、叶わなかったねー』なんちゅうて、寂しそうに話してるのを聞いちまったもんでのう……こりゃあ、ワシらの出番じゃな! と思うてな?」
「それでこの、『
願い事を叶える機』ってわけか」
「んや、正確にゃあ、『願い事が叶った夢を見せる機』じゃな。こいつの周囲にいる人間の脳波から、潜在的に抱いとる願い事を読み取り、まるでそいつが叶ったような、楽しーい夢を見せてくれるマシン……」
「っちゅうわけで、完成じゃ! 春彦くんよ、まずはちょいと、実験台になってもらえるかのう?」
エジソンさんにアインシュタインさんも、そう言って、大ハリキリ。
機械の仕組みこそよく分かりませんけれど、いつもは諸々において配慮というものに欠けている科学団の面々が、あえてそんなことを言い出したからには、春彦だってちょっとばかり、協力してやろうという気にもなりまして。
「しょうがねぇなぁ、付き合ってやるよ!」
ぽちり、とスイッチを押し込むと、ごうんごうんごうん……機械は震動とともに、動き出しました。
相も変わらず、少年科学団のアジトたるこの掘っ立て小屋の周辺一帯へ影響を与えている
神魂が、彼らの新作発明品にもまたほわほわほわんっと作用していたことには、誰もが気付かないままに……。
墨谷幽です、よろしくお願いいたします~。
ガイドへは、楢木 春彦さんにご登場いただきました。ありがとうございました!
(ご参加いただける場合は、ガイドのイメージによらず、ご自由にアクションをかけて下さって構いませんので!)
このシナリオの概要
こちらは、寝子島少年科学団のシナリオ第5弾となりますー。
科学団の新発明、その名も『脳波感応式広域幻灯機(ソラリス・コンバーター)』は、作動中の機械の周囲にいる人が、心の中で叶えたいと思っているお願いごとが、本当に叶った! という楽しい夢を見ることができる、素敵なメカです。
……のはずだったのですけれど、科学団のアジト周辺には例によって神魂が影響を及ぼしていて、この機械もまた想定外の不可思議な現象を起こすようになりました。
島全体へと広がった影響により、本日の寝子島では、クリスマスシーズンにサンタ★ポストへ投稿されたお願いのうち、叶わなかったものが叶います。
といっても、その度合いは様々で、ささやかなお願いならそのまま叶うこともあれば、規模が大きい、また難しい願いごとは一部のみが叶ったり、本当に叶ったような夢を見る、といった形で効果が現れることもあります。
気まぐれな神魂によるものなので、現象は長くても一日程度で終了するでしょう。
なお、サンタ★ポスト経由でなくとも、クリスマスに心の中で考えていたお願いがあったのに、といった方でも大丈夫です。
お願い叶わなかったなぁ……と思っていた方、ぜひお気軽にどうぞ!
アクションでできること
アクションでは、クリスマスに叶わなかった(今回叶えたい)願いごと、シチュエーションや設定、願いごとがどのように叶うか? といったところをお書きください。
ちなみに少年科学団の面々は、寝子島小学校の近くにある『風の原公園』の真ん中に件の機械を設置し、訪れる人々のお願いを叶えています(と、本人たちは思っています)。
願いごとが叶うきっかけとして、公園を訪れて彼らに声をかけて絡んだリ、逆に声をかけられて無理やり体験させられたり。あるいは彼らとは特に絡まず、島のどこかで自然と叶った、という形でも構いません。
ご自分のキャラクターが参加しやすい形にしていただければと思います。
●1.叶わなかった願いごと
らっかみ!タイムの12月に、クリスマス雑貨店『Joulupukki(ヨウルプッキ)』さんに設置された『サンタ★ポスト』へお願いを投稿された方は、そのURLかトピックの投稿番号と、簡単な内容等をお書きください。
例)
http://rakkami.com/topic/read/2394/114 (または、『114番』など)
『お友だちがたくさん欲しいです☆』
※ただし、あまりにも規模の大きなお願いや、本シナリオ中で完結できないようなお願い(NPC○○にイラストをつけて!など)は叶えられませんので、あらかじめご了承くださいませ。
その場合は、お願いの形を少し調整していただくと、叶えられる場合もあるかもしれません。
(○○にイラストをつけて→○○と一緒に遊びたい、など)
『サンタ★ポスト』に投稿はしてないけど、クリスマスに叶わなかったお願いがあるという方は、そちらをお書きいただいても構いません。
●2.シチュエーションや設定など
お願いが叶う時、その舞台となる場所や、日時や天候、周囲の状況などに関して、ご指定がありましたらお書きください。
特に希望が無い場合は、お任せということでも構いません。
●3.どんな形で叶うか
お願いがどんな形で叶うか、その展開など、詳細をお書きください。
ただし前述のように、あまりにも規模が大きいお願いや、シナリオ中で叶えられないものなどは、一部のみが叶ったり、そういった夢を見た、という扱いになる可能性もあります。
こちらについても、特に希望は無し、あえて展開はお任せで、ということでも構いません。
また、神魂や科学団の発明についてなどは、何かしら変化を認識していても良いですし、全く知らなくても構いません。
その他、
・不思議現象認識度
(また神魂か……、楽しい夢だなぁ! など)
・おじいちゃんたちへ思うところ
(長生きしてね、いい年こいてメーワクかけんなよ! などなど)
なんてところも、もしありましたら、併せてお書きいただけましたら~。
『寝子島少年科学団』とは?
少年の折に、『将来は絶対に科学者になる!』と誓い合い、そんな夢を抱いたままフツーに歳を取ってしまった、三人のおじいさんたち。それぞれにアインシュタイン、コペルニクス、エジソンなどと愛称で呼び合うのは、その夢の名残です。
九夜山の中腹にあるほったて小屋を秘密基地と称し、日夜怪しげな実験や発明などを行っています。
最近は、小屋の周辺一帯に影響を及ぼした神魂のおかげで、彼らが適当な理論で作った大雑把かつ奇妙なメカが、いかにもそれっぽい効果を発揮するようになってしまいました。
そんなこととは露知らない科学団は、この歳にして科学者としての才能が開花した! と喜んでいるようです。
その他
●参加条件
特にありません。どなたでもご参加いただけます。
●舞台
基本的には寝子島の中ということになりますが、お願いの内容によっては、それ以外が舞台となる可能性もあります。
●NPC
○寝子島少年科学団
偏屈なリーダーアインシュタインさん、女好きなコペルニクスさん、シニカルなエジソンさんの、おじいさん三人組。
基本的にはトラブルメーカーですけれど、たまには良いこともするみたいです。
『風の原公園』にいますので、何かしら絡みたいという方はそちらへ足を運んでみてください。
○エマ=メイ "サイエンス・ボーイズ・ドウター" ver2.1.0
少年科学団の面々が作り出したメイドロボットに、神魂が影響を与えて動き出したもの。
前回から数度のバージョンアップを経て、今ではすらりとしたフツウの手足が付きました。
公園にて、科学団のお手伝いをしています。
○その他、キャラクター登録されているNPCについては、ご自由に指定していただいても構いません。
※ただし、そのお願いがどのように叶うのかは、アクションの内容によります。
たとえば『一緒に散歩する』など、ちょっとしたお願いなら、そのまま叶うかもしれません。『恋人同士とデートする』といったお願いなら、夢の中での出来事として描写されるかもしれません。
以上になりますー。
それでは皆様のご参加を、お待ちしております!