授業風景～１年３組の場合～｜リアクション

授業風景～１年３組の場合～

●女子生徒のメニュー・１

　料理が得意な生徒もいれば、苦手な生徒、したことがない生徒もいる。
　普段は誰かに作ってもらう、コンビニでパンや弁当を買うかで良い。
　だが、授業となれば苦手だろうが嫌だろうがお弁当を自力で作るしかない。

「料理はやったことないけどやってみよう！」
　明るく、元気に作ろうと頑張る雪原真白が作ると決めたのは、卵焼きとタコウィンナー。　卵焼きは、母親が作ってくれているので自分も作ってみようと選んだ。
「これにブロッコリーの塩茹でを添えて……と。お弁当の定番といえばこれだよね」
　母親が良く作ってくれるお弁当を失敗しても自分で作る、何とかなるという持ち前の楽観思考で乗り切るだろう。

　真白もウィンナーを使うと知った三ヶ島葵は、これ定番なんだねぇと商店街で買い揃えた材料をチェック。
　コンビニ弁当か学食が主流だが、たまには自分で作ってみるのもいいかなー？　と何を作ろうか思案中。
「ウィンナー、ほうれんそう、ミニトマトに卵に苺。まあ、こんなもんかなー」
　デザートの苺とミニトマトを選んだ理由は、ヘタを取るだけで楽ちん、ウィンナーは焼くだけだから。
　苺は彩りを考えて。ほうれんそうは炒め物かおひたしにするのだろう。
　顔はいつもと変わりないニヤニヤ顔だが、心の中では「ニガテだけど頑張って作るよー！」とちょっと泣きそう。頑張れ、葵！

　料理は寮でたまに作る運動系な鏡箕萌は、周囲を見渡しながら他の女子はしっかりしたお弁当を作れるんだろうなあ……と不安に。
　なぜなら、彼女のメニューは焼肉弁当だから。肉好きなのもあるが、焼く、炒めるという調理法だからというのもある。
（料理が得意な女の子はいろいろ作れるんだろうなあ……。そんな子もいるだろうから恥ずかしいなぁ……）
　これくらいしか思いつかないと落ち込む萌に気づいた白沢先生は、他人の目を気にせず、自分らしいお弁当を作れば良いんですよと励ましてくれた。
「そうだよね？　ありがとう先生！　あたし、頑張って自分のお弁当作るっす！」
「実は私も料理苦手なんだよねー、鏡箕くん」
「三ヶ島さんも？」
「私も苦手だけど頑張るもん。だから鏡箕さんも一緒に頑張ろう！」
「雪原さん……」
　白沢先生の励ましと心強い仲間ができたことで、恥ずかしいけど、皆と最後まで調理すると決めた萌。協力すれば、最後までやり遂げられる。

　そんな中、別の意味で苦手なのが。
「栄養バランス……ねぇ。どうせ長期スパンで見りゃ、食べたいモンだけ食べてもバランス摂れるってのに」
　面倒臭いと不機嫌な表情でシガレットチョコを咥え、鋭い眼光で萌達と話している白沢先生を見る桜崎巴。
（畜生め……上手いところのツボをつきやがって……。これじゃあ出席しないわけにはいかないじゃないか）
　本当に白沢先生が嫌なら、悩むことなくとっくに授業をサボっている。
　今日の唐突ともいえる調理実習は何かの気紛れで、授業の体裁を取っているのは後付け。本音は全然関係のない遊び心に違いない。
　そうだとわかっていることもあり、巴は授業に出るしかなかった。先生の中でも、白沢先生のようなタイプは嫌いではない。
　白沢先生に苦手意識を持っているためまんまと作戦にひっかかった気がして気に食わないが、授業に出たからには嫌でもお弁当を作るしかない。
「桜崎さん、何を作るか決まりましたか？」
「まぁね」
　ぷいっとぶっきらぼうに答えるのは、白沢先生の柔和な表情が、自分の考えていることがすべてお見通しではないかと怖くて仕方ないから。
　ここで逃げたら負けだと思われるのが癪なので、渋々牛肉と玉ねぎ、アスパラを炒めたお弁当を作ることに。

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