●お弁当を仕上げましょう
　
　ご飯が炊きあがり、蒸らし終えたので弁当箱にご飯を詰めたり、おにぎりを作ったり。
「良かったー、ふっくら炊けてる。下はちょっとおこげになってるけど……」
　鍋の蓋を開け、ご飯の炊き具合が上手くいったことに安心する雪原 真白は、まずはご飯を弁当箱に詰めた。
　別の弁当箱には、卵焼きとブロッコリー、タコさんウィンナーをバランス良く詰め込んだ。
　横嶋 下心のご飯も炊き具合は良いようだ。

「うん、良い具合だ。さすがは酒造のお水！」
　材料が良いのもあるだろうが、彼の手際の良さもある。
「先生、できましたー！」
　ご飯の真ん中に梅干しを乗せ終えた下心が、弁当箱を高く掲げ、いの一番に完成したお弁当を披露する。
「ご飯には炭水化物、梅干しにはたんぱく質、脂質、カルシウム、リン、鉄分、ビタミン、有機酸の成分が含まれていますから栄養バランスは申し分ありませんが、おかずは無くても良いんですか？」
「俺はこの一見単純明快な究極系の日の丸弁当だけで良いんです！」
　きっぱり、はっきりそう言い放つ下心に、それ以上何も言えなくなった白沢先生だった。
「まったく、同じ梅を使って作ったご飯とは思えないな」
　ご飯に梅干しと一緒に漬かってた紫蘇を刻んで混ぜたものを完成させた吉野 夕弥が、炒り鶏とアスパラと卵のサラダを盛り付けながら言う。

「授業だから作ったけど……」
　炊き込みご飯の出来に自信が無いのか、工夫が足りなかったと心配する逆巻 天野も盛り付けに。
「……なんとか間に合ったでござる……。……そなたが手伝ってくれたおかげでござる……」
「夏神君も頑張っていたからだよ。見事な出来栄えになったじゃないか」
　夕弥の協力もあり、夏神 零の３０品目弁当も完成。天野の弁当も雰囲気に合わせ重箱詰めなので、ちょっとした豪華なお弁当がふたつできた。

「お弁当完成ー！　大福もできた？」
「ああ。頑張ったな、コータロー。料理は楽しいんから、今後もやってみなきゃ勿体ないぞ」
　雨崎 荒太郎と雪見 大福の親友同士は同時に完成させた。

「たこ焼きサイズの一口おにぎり、できあがり♪」
　天馬 ひびきはご飯に様々なふりかけを混ぜ、海苔ととろろ昆布の２種類のおにぎりを作った。
「私のお弁当は、旬のアスパラをメインに野菜多めなの。海藻も肉も乳製品も全部網羅かな？　ベジタリアンでもＯＫなものもあるの」
「栄養バランスいいね～」
　塩少々で味付けしたご飯を海苔で巻いたおにぎりを作り終えた普堂 しおりは、緑の季節に合ったパステルグリーンの弁当箱に色とりどりのおかずカップを使い、お花畑をイメージした盛り付けに。
「サンドイッチは別のボックスに入れて、と……」
　宮野 雷子は、完成した卵焼きとチーズ入りちくわといったおかずにレタスやミニトマトで彩りを添え、見栄えが良くなるように詰める。
「普堂さんのお弁当、お花畑みたいで可愛い。宮野さんのはすごく綺麗ね」
　カロリーコントロールしなくちゃとご飯を計量する椿 美咲紀。５０グラムで８０キロカロリーなので、少し多めに入れてもいいかもしれない。
　三段重ねのお弁当に量り終えたご飯を詰め、残りの段にはサラダと肉を別々に。
　自分用と誰かにあげるお弁当２個を計算しつつ盛り付け完成させた。
「私も完成！　皆のお弁当、美味しそうだね」
　大盛りサイズのお弁当箱に食べたい気分の唐揚げを詰め込んだ瑚野上 栞凪。ご飯、他のおかずは別のお弁当箱に詰めてある。
　栞凪アレンジの悪魔のたまごは、量が多めなのでこれは大きめのお弁当箱に。

　しおりの盛り付け具合を見て、鏡箕 萌は女の子らしいお弁当だなぁ……とちょっと落ち込みつつ気味で焼肉弁当を完成。
「まあ、いっか。これがあたしなりのお弁当だし」
　カロリーが気になる美咲紀、見た目が気になる萌に対し、毒島 林檎はそんなのお構いなしとカツドゥーンと命名したカツ丼を丼に盛る。
　丼だが、調理室にあるものを拝借。大量ともなると、器は持参できなかったようで……。

　おかずは無いけど、余分に作ったものを交換して料理のわらしべ長者を目指す算段の鰐淵 碧緒は、他の生徒も盛り付けをのんびり見学。

「まぁこんなもんだな。ちゃんと弁当作れば文句言われないだろ」
　ご飯の上に牛肉とアスパラを炒めた物を乗せ、お弁当箱に詰め込む桜崎 巴は、白沢先生がこのお弁当にどのような反応を示すか気になっている。

「盛り付けはタコさんウィンナー、蒸しサラダ、トマト、ウサギりんご、ご飯の順やな。間にサラダ置いとけば、肉とリンゴで味混ざらへんからね」
　ミニトマトは１個だけだが、四野辺 蘭月のお弁当はそれ以外は炭水化物、タンパク質、脂質、ビタミンＡ、ビタミンＢが摂取できるお弁当になった。
「頑張りましたね。本で研究した成果が出ましたか？」
　先週のことやっぱバレとったか！　と驚いたが、ガイドブックは没収されなかったので白沢先生優しいなあと感謝する。

「あ、あら？」
　ご飯とおかずを弁当箱に詰めたら完成！　のはずが、作りすぎて入りきらないので困っているのは栖来 衣夢。
「溢れた分は、誰かお弁当が寂しい人に分けよう」
　そう言いながらチラ見したのは、日の丸弁当をまだ披露している下心だった。
　下心同様、完成した弁当を披露しているのは神城 凛。自作のサンドイッチを見てもらいたくて仕方がないご様子。

「あれー……みんなお弁当おっきいねー？」
　三ヶ島 葵がそう思うのは無理もない。苺を除くすべてのおかずをタッパーに詰め込んでギチギチにしてしまったのだから。

　楽しんだり、工夫したり、苦労したりだったが、３組のお弁当作りは終了した。