死と隣り合わせの節分～鬼はフジコ～｜リアクション

死と隣り合わせの節分～鬼はフジコ～

「俺も、志波先輩とほぼ同じ経緯です」
　学校近くのコンビニ。
　サキリ・デイジーカッターは合流した武道と店内を物色していた。
　すでにフジコの出現で被害にあったのか、店は破壊され誰もいない。
「ボロい猫鳴館はヤツの襲撃に耐え切れず、あっさり陥落してしまいました」
「年季入ってたからな」
　武道はしみじみと呟いた。
「意外と豆は少なかったな」
「でも、これでフジコの一体くらいなら迎え撃てますね」
「え、一体じゃなかったの！？」
　サキリは神妙な面持ちでうなずく。
「猫鳴館には二体きました。今回は対抗手段があるからマシですが、あの殺人ロボ、きっとあちこちでお宅訪問を行なってるはずです」

「あいつ頑丈過ぎだろ！？」
　窓から飛び出した御剣刀の背後で、彼の部屋が爆発炎上する。
　インターホンに応え、現れたフジコと戦いを繰り広げた末の出来事だった。
　刀は手にした刃引き刀を見る。オリフジコンに斬りつけた得物は傷んでいた。
　結局、人形のルヴィアと、二人の女の子と一緒に撮った写真を抱えて部屋を飛び出すしかなかった。その他の私物は諦めるしかない。
「大切な物を守れただけでもよしとするか」
　声に悔しさをにじませる刀は、学校へと進路をとった。
「あそこなら隠れながら迎撃が出来るし、上手くすれば誰かいる筈だ」
　刀は方向を修正して、参道商店街を経由するように動く。すでに最初の戦闘で豆が効くらしいとはわかっていた。
「おじさん！豆を買うよ。これお金ね、お釣りはいいから！」
　おどろく店主に多めにお金渡し、風のように出て行く。
　やがて、同じく学校へと避難している集団を見つけた。
　彼らを二体のフジコが追っている。
「おい、フジコ多すぎないか！？」
　言いながら、加速してフジコの背後から斬りかかる。
　ンビュッ！！
　気付いたフジコの片割れが目からビームを放つ。
　加速下でもなお速いその攻撃をなんとか避け、刀は豆の入った袋を投げ上げる。
　そして刃引き刀で何度も斬りつけた。
「無駄よ、ムダムダ。私のカラダは――」
「オリフジコンでできてるんだろ？　知ってるさ」
　斬らない代わりに加速の運動エネルギーで殴り飛ばす。言葉を遮られたじぇのさいだー☆フジコは口を開き、冷凍ガスを吐こうとした。が、次の瞬間火花を散らして痙攣する。
　サキリが瞬間移動で豆の袋をキャッチし、フジコの開いた口へ流し込んだのだ。
「節分はね、歳の数だけ豆を食べるんだよ。でも君は年齢が解らないから適当でいいよね？」
　口の中に無理矢理豆を突っ込まれ、フジコの頭がショートを起こした。
「こっちもだ！」
　片割れがやられて躊躇したもう一体に、武道のろっこんが突き刺さった。
「痛え！――けどっ、生身の部分もあったんだな？」
「アラ……？」
　サイボーグが局所麻酔に動きを鈍くする。その瞬間に葉月が豆を何度も投げつけた。
「……鬼は外、よ」
　もう外だけど、と彼女が言った時には、二体のじぇのさいだー☆フジコは爆散していた。

「私も部屋をあの存在に襲撃されたの」
　葉月はフジコの襲撃をかわしながら学校へ向かううち、武道やサキリと合流したのだった。
「今ので私たちの手持ちの豆は無くなったわね。補充しないと」
「家庭科室とかに豆置いてあるかな」
「問題は量だな」
　刀の言葉に、武道が思案する。
「困ってるようだな」
　新たな声が、四人を振り返らせた。
「よければ、豆を運ぶのを手伝ってくれないか？」
　そこに、大量の豆を自転車に積んだ八神修がいた。