「お、もう節分か」
路地にはひんやりとした風が吹いている。
鬼は~外! 福は~内!
その風に乗って聞こえてきた声に、
志波 武道は季節の移ろいを感じていた。
今年の豆まきはどうしようか、といったことを考えながら下宿先の『美咲』にたどりつく。
「ただいま~」
「オカエリ♡」
返事があった。そのまま部屋へ行こうとしていた武道は、次の瞬間、駆け上がってきた寒気に凍死するかと思った。
一度通り過ぎた場所を逆再生のように足を戻し、横手にあった部屋をのぞきこむ。
そこに、見知らぬ誰かがいた。
いや、実はよく知っている気がするが、よく知っていたくない存在がそこに「あった」。
「コン・ニチ・ハァン」
混乱する武道の前で、その人物はぞっとするような吐息を出して振り返る。
首から上をきっちり180度、真反対に駆動させて。
「フジコ……先生」
いや、違う。
富士山 権蔵によく似たその存在は、正確には人間ではない。
『じぇのさいだー☆フジコ』。
未来の科学技術が生み出した、フジコシリーズの最新型サイボーグだ。
「鬼トシテ、貴方ノオ宅ヲ電☆撃☆訪☆問」
そう言うと、じぇのさいだー☆フジコは機械音とともに立ち上がった。
「う、うわあああああ!?」
名状しがたい恐怖に突き動かされて、武道は即座に走り出す。
寸前まで立っていた場所にロケットパンチが着弾したのは、わずか数秒後のことだ。
「悪イ子はイネガー! 悪イ子はイネガー!」
「その鬼、季節が違うだろ!」
ツッコみながら、手近にあった消火器を掴んで投げる。
しかし、じぇのさいだー☆フジコは顔面に直撃したそれをまったく意に介さず突き進んできた。
「これなら!」
武道は混乱しながらも、相手の言った「鬼」というフレーズに希望を託して、手にしたそれを投げた。
米屋の主人が買い置いていた、豆まき用の豆である。
『ギィィィイイイイイヤアアアアアアアアアア!!!!』
野太い絶叫が轟いて、じぇのさいだー☆フジコが吹き飛んだ。入口を巨体でもって破砕して、どこかへ去っていく。
吹き込んできた寒風にあたりながら、武道はしばらく呆然と入口を見つめていた。
電話が鳴ったのはそんな時だった。
おっかなびっくり、手に取ると、知人の声が響く。
「助けて、フジコが家に……!?」
破壊音が響く。知人の叫び声が電話から遠ざかっていく。どうやら携帯を落としたらしい。そのままでいると、不意に声が聞こえてきた。
「マタ、訪問スルワ」
宣戦布告であるその言葉に、武道は決意した。
――豆を集めよう。
寝子島の節分大戦が、こうして幕を切って落とされたのである。
こんにちは。
叶エイジャと申します。
志波 武道さん、ガイドへの登場ありがとうございました。
(いつの間にか普通の日常でない世界にいたので、登場時は口調や思考にずれが生じているかもしれません)
●
『今回は、伝統的な節分を題材に取り上げようかと。
……「どこが伝統的なのか」? なるほど。
子どもの頃、本気で豆を投げた記憶はありませんか?
しかし年を取るにつれ、心の底から恐怖していた「鬼」は消えてしまった。
豆まき自体も時代を経るにつれ、スポーツ化や貴族的な遊びになるといった形骸化がすすんでしまいました。
幸福とは何か、その定義は難しい。人の数だけあると言ってもいいでしょう。
しかし「鬼を外へと追いやった時、内に残った物こそが幸福」という見方もまた、できるのではないでしょうか?
畏怖すらしかねない「鬼」との闘い。それこそが伝統的と言った理由です。
今再び、幼き頃に感じた原初の恐怖を――僕にはそれが、幸福を感ずる一つの手段と思われてなりません。』
(じぇのさいだー☆フジコを製作した、とある学校の理科教師の述懐より)
●
はい。今回は「お宅訪問してくる鬼に対して、楽しく豆まきをしよう」というお話です。
はたして突然現れ、あなたを血祭りにせんと迫ってくるフジコを撃退できるのか。
おおまかな行動としては、
・家で万全の準備をし、迎撃する。(個別描写)
・友達を助けるため、友達の家で協力して迎撃する(あるいはフジコに襲われて、友人の家に逃げ込む)。
・フジコの襲撃で家が陥落したので、学校に行ってケリをつける(学校に行った人が全員合流します。先生NPCなどは死屍累々になるでしょう)
豆は何回かぶつける必要があるので、豆を探しながら逃げたり、戦ったりすることになります。
豆のぶつけ方は各自にお任せします。
なお、参加者の数だけフジコは存在します。
●じぇのさいだー☆フジコ、データ。
・一定量の豆をぶつける、これを何度か(3~4回)繰り返すと撃退できる。
・オリフジコンというなんか硬い金属でできている。
・武装が近代的。レーザーとか冷凍光線とか。
・なんだかんだでみんなが大好き。
レッツエンジョイ、ビーンズサバイバル。
皆様のご参加とアクション、お待ちしております。