冬の日。新たな始まり｜リアクション

冬の日。新たな始まり

【ＨＲ・寝子島高校】

　雨宮草太郎校長の長い長ーいガムダン話で延びに延びきっていた始業式がようやく終わり、寝子島高校では各クラスでＨＲとなった。

＜普通科１年１組＞

（校長先生またシトラス・ガムダンの話してたな、本当に長かった……。今回は神魂関わらなかったし、そこはよかったな）
　担任島岡雪乃のおっとりした話声を聞きながら、御剣刀は先程までの始業式を思い返していた。仇敵にメールを送り終えた大田原いいなはしばらくぶりの学校の雰囲気を楽しんでおり、屋敷野梢は多忙になりそうな放課後のスケジュールを考え、うんうん唸っている。そして後木真央に引っ張られるように登校した宮祀智瑜は、しっかりと祖母の作ったおにぎりを食べてきたおかげで今は元気を取り戻していた。
　雪乃のお陰で穏やかに１年１組のＨＲは進んで行き、宿題の提出となった。

　席順に生徒が次々に本日締め切りの宿題を提出していく。雪乃の声音に若干ぼーっとしていた刀も、自分の番となり慌てて席を立った。
「あっ、御剣くん、ちゃんとやってきたんですね？」
　おっとりと言う雪乃に刀が宿題を提出しながら答えた。
「一応やって来たよ、大丈夫」
　出来はどうかと訊く雪乃の言葉に刀は苦笑する。
「……それは勘弁して下さい、本当にもうマジで。頑張ったんだからさ！」
　にこにこ自分を見つめる雪乃に、刀は言葉を続けた。
「俺は剣に生きるから、勉強はできなくても……」
　にこにこにこにこ。雪乃の無言の微笑みに刀は下を向いた。
「できなくても…………よくないです」
「そうですね。えっと、大人になって御剣くんを助けるかもしれませんから、今は頑張りましょう」
　雪乃の言葉に刀は曖昧に頷いた。
　剣に生きる気持ちは譲れない。しかし雪乃の言葉も間違っていない気がした。例えば、武者修行する時なんかには、英語力は必要かもしれない。そう考えれば話せるようにはなりたいよな……。

　そこでハタと刀は気付き、雪乃を振り返った。
「あっ、先生。今日武道場使っても大丈夫ですか？」
（そうだった。今日部活やっても大丈夫か島岡先生に訊くんだった）
　剣道部顧問でもある雪乃に許可を求める刀。……やはり剣の道は刀の心の大部分を占めているらしい。