【お正月】寝子島書初め大会｜リアクション

【お正月】寝子島書初め大会

●巨大書初めに思いを込めて

（巨大書初めか。テレビで見たアレをやれるのか……）
　八神修は、クールな表情の下に少年らしい好奇心を秘めて書初め会場へやってきました。
　時子が巨大書初めをしている様子を見ていると。
「あっ、修くん」
　そこには買い物袋を提げた七夜あおいが立っていました。
「偶然だな。あおいは、今日は書初めに？」
「買い物の帰りだよ。来るとき見かけて気になってたから、寄ってみたの」
「今から書くのか」
「うーん、そこまでは。書くのを見るだけかな」
　あおいとは何を話しても楽しい、と修は思います。あおいの言葉を聞きながら、修はすばやくあおいの服装に目を走らせています。
「それ、マンボウ君のバッヂだな。実は俺も」
　あおいがバッグにつけていたバッヂを見つけ、修は鞄の横を見せました。
「あ、お揃いだね」
　そこにつけられていた同じバッヂを見て屈託なく笑い、あおいは修に聞きました。
「修くんは巨大書初めをやるの？」
「迷っているんだ」
　修は今の気持ちを打ち明けます。
「書道はごく普通のレベルでさ。デジタル……の弊害かな」
　苦笑しつつ、
（他の学科の俺を知ってたら俺にも苦手な物が？　って思うかもな）
　あおいの前ではいいところを見せたいと思う修です。
「普通ならいいんじゃない？　こういうのは上手下手気にしなくていいと思うよ」
　でもあおいはそんなことは気にしていない様子でした。
「そうか、ならやってみようかな」
　あおいの言葉に勇気づけられ、修はスタッフに参加を告げました。
「下手でも笑わないでくれよ」
　そう言って、巨大な紙に思い切り筆を走らせていきました。
　あおいを見て心に浮かんだ文字を、力強く！
　大きく書かれた一文字は、無難に書こうと思うならまず避ける、バランスの難しい文字でした。

　愛

　書き上げて、あおいのほうを振り返りました。
「上手じゃない。どうしてこの字にしたの？」
「なんとなく」
　修は微笑みます。
「恋と愛は違う。日本語の表現の豊かさだと思う。英語じゃどちらもラブだもんな」
「そうだね」
　微笑んだあおいの表情に、修は見惚れていました。
　心がふわり、と浮き上がるような気分で。
　あおいは目を輝かせて話します。
「恋はちょっとしたことで好きになったり、嫌いになったりするけど、家族を思う愛情はそうじゃないよね」
　なんだか、あおいがいつもより情熱的だ、と修は感じました。
「俺も恋よりは愛が好きだよ。愛……一人に向けても回りに向けても良い、良い言葉だな」　
「自分のことより、相手の幸せを願うのが愛だと思う。……私はうちの家族が大好き。ずっと守っていきたいと思ってるの」　
「あおい……一緒に書初めしないか」
　修に熱い眼差しを向けられて、あおいは少し我に返ったようでした。
「えっ……私は大きいのじゃなくていいよ」
「なら、俺も今度は普通の紙に書こう」
　二人は並んで書初めをしました。

　大志

　今度の修の文字は、そう書かれていました。
　

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