ウィンター！部活動のお時間です！～運動部編～｜リアクション

ウィンター！部活動のお時間です！～運動部編～

（とは言ったものの……）
　１Ｒ。円はリングで相手と相対しながら思っていた。
（この学校、強いね）
　何と言ってもひびきと試合前に話し合ったように、下半身を鍛えるトレーニングを徹底している所が大きいのだろう。加えて先の２試合で分かる丁寧な試合運び。
（だからこそボクはこのスタイルを取る）
　ステップを踏みながら円はリングを大きく回る。そう、今回彼女はアウトボクシングスタイルを取っていた。

（ボクの得意な距離はインファイト）
　当然だろう。小柄な彼女にはアウトボクシングは一見すると向くとは思えない。
　しかし、だからこその駆け引きが大事だ。見るからにインファイトの選手がインファイトをやった所で意外でも何でもない。最初から手札を見せている様なものだ。
　円はここ半年、リングのスペースを意識した戦い方を研究してきた。自分の引き出しを増やし、自在に間合いを操ってこそ最終的に最高の形で試合を持っていける。だからこそのアウトボクシングなのだ。
　小柄な円がリングを大きく使う事に相手は戸惑いを隠せない。様子見で１Ｒは終了した。

　２Ｒも円は焦れてきた相手が踏み込んできた所をカウンターで手数を稼ぎ、しっかり後ろに下がるアウトボクシングスタイルを崩さない。そして今度は相手が警戒して引き気味になった所に合わせ、円は相手の懐に思い切り飛び込んだ。得意のインファイトスタイルだ。
　相手がぎょっとした隙を突き、思い切りラッシュをかける。
（殴り合いなら負けないよ。元々インファイトだからね）
　至近距離から重いパンチを相手ボディに叩き込む。ガードが下がった所にアッパーをお見舞いしてやった。
　けれども相手が接近戦と覚悟を決めた気配を感じ取れば、また円はさっと間合いを切り旋回を始める。
　肩、足、腕、目線。相手の様々な初動を読み、行動を予測しその上をいく。
（駆け引きが楽しい……！　これが試合を作るって感覚か）
　円は自分のペースがリングを支配していると感じていた。

　結局相手は円のペースを崩せず、そのまま試合は終了。円の勝利となった。
　一矢報いた女性軍は抱き合って喜ぶ。その様子を腕組みをしながら満足そうに見ていた巧が、男子の方を振り返り一際大きな声で言った。
「よぉーし、次はお前らじゃ！　気合い入れろや！」