ウィンター！部活動のお時間です！～運動部編～｜リアクション

ウィンター！部活動のお時間です！～運動部編～

　次の試合は冬華の番だ。
「君もインターハイ出場者やからな。敵さん気合い入っとるで！」
　巧の言葉に戸惑いながらも冬華はリングに立った。

　冬華は典型的なアウトボクサータイプだ。パンチを打ちつつも逆に打たれる前にさっと後ろに引き、相手に有効打を打たせない。相手を叩きのめすという性格ではない冬華にはぴったりの戦法と言えた。
（そのためにフットワークの練習は特に意識してやってますし）
　相手の出方を見つつ、相手のペースに惑わされず。
　平常心を保って試合を運ぼうと冬華は思っていたのだが。

（この人……やりづらい！）
　相手は冬華と同じアウトボクサー。しかし、リーチが完全に相手の方が上回っていた。同じアウトボクサーなら、リーチが長い方が間違いなく有利だ。相手はワンツーのコンビネーションで確実に手数を稼ぐ。アウトボクサーらしい軽いパンチではあったが、有効打であることに変わりはない。
（困りましたね、どうしましょう）
　攻めあぐねている内に２Ｒまでがあっという間に終了してしまった。

　最後のインターバル。自コーナーにいる冬華に円がそっと声をかけた。
「いくらリーチが長くてもね、打ってくる時は絶対に詰まってるから、そこで１歩だけ踏み込んでみて」
（そうか、カウンターです……！）
　はっとして冬華は円を見る。円はウインクをして冬華に応えた。
「よし、頑張ります！」
　パンッ！　とグローブを打ち合わせて気合いを入れ直し、冬華は最終Ｒに向かった。

　冬華は良く攻めた。カウンターで何度も相手を脅かしたが、手数で上回る相手は焦る事なくジャブで牽制する戦法に切り替えてしまい、そのまま試合が終了してしまった。
「は～、負けてしまいました。でも、いい勉強になりました」
　ヘッドギアをはずして冬華は頭を一振りする。しかしその顔は気落ちしてはいなかった。リーチの上回る相手との戦いは、彼女にとってかなり良い経験になったようだ。
「だいぶ勉強になったやろ、北条さん」
　巧の言葉に冬華は大きく頷く。巧は笑って冬華の頭をわしわしと撫でた。
「収穫があって何よりや。よし、女子最後は桜庭さんや。仇とってや！」
「頑張ってください！」
「頼むぞ、部長！」

　部員達の声援に円はニッと笑って答えた。
「まーかせて！」