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- 学年：職業
- 00月00日生 00歳
- AAA000000
＜月華＞月昂崩落 ―捧げられた姫―
急：得た物
「あんなやさしい子なんて知らないわ……」
一人の女性が、声を震わせて刹弦に言う。女性は夫らしい男性に支えられながら、刹弦へと静かに言った。
「お願い、私達をそっとしておいて。貴方にだけは絶対に言うな、ときつく言われているのよ」
その一言が、刹弦を更に困惑させる。だが、彼は後に知る。荒れ狂う神の怒りを静めるべく、想い人が『贄姫』として捧げられた事を。
「嘘だ……」
刹弦は絶望した。
『贄姫』を神に捧げるべく仕度を整え、薬を混ぜた酒を飲ませて神や祖霊の元に送るのは神官の役目である。刹弦の関わった儀式ではなかったが、そんなことは些細な事だった。刹弦の唯一の支えであった『彼女』は、既に神へ『捧げられた』後だった。
刹弦を含めその場にいた全ての者が呆然とする中、ねむるはもう一度口を開いた。
「彼女は、刹弦さんにとって自分が唯一の支えだと知っていた。だから、貴方を傷つけないように、先に嫌われようとしたんだ」
「そんな……」
刹弦は困惑するが、ねむるは穏やかな眼差しを向ける。
「信じていいよ。彼女は君の事が好きだった。多分……灯が消える最後の瞬間まで……」
その一言に、刹弦は身を震わせる。そんな彼に歩みよった者がいた。亮である。亮は当初刹弦と真正面から戦うと危険だから故に、説得を試みようと考えた。だが、今は違う。
彼はつけていたゴーグルなどを外し、「あんたと戦う気はない」と、武器を置いて素顔を晒した。
「あんたは、人を幸せにしたいんだろう？ それなら、どうして感情のある人達と深く付き合わないんだ？ 結局さ、正しい答えなんて色々体験してみないと解らないもんだろ？」
その言葉に合わせ、美咲紀が刹弦に駆け寄って手を握る。
「私は、刹弦さんを助けたい。……私達は、話し合い、事態解決のために歩み寄るべきだと思うのです。……手伝うといった言葉、嘘じゃないもの」
美咲紀が優しく微笑みかければ、刹弦は不思議そうに彼女を見つめる。
「刹弦が人の心を凍らせて奪おうとするなら、真央ちゃん、何度でもやりあうのだ。でも、それが刹弦の心が凍りついている所為なら、心を溶かしたいのだ。今更かもしれない。けど、話し合おう、なのだ」
真央もまた、刹弦に歩み寄る。彼女は背伸びして、刹弦の頬を両手で包み込む。
「……刹弦が、寂しくならない方法、一緒に探したいのだ。一緒にいこう、刹弦」
「いっしょに？」
真央の言葉に首を傾げる刹弦に、亮が言葉を繋ぐ。
「うん。寝子島に来てみないか？ あんたが前に居た場所は、性質の悪い連中ばっかりだったろうけど、幸いにも俺達の大半はお人よしだ。その証拠に……こいつらは『仲間』を助けに来てるんだ。ちょっとは信頼できるだろ？」
亮に釣られ、刹弦は周りを見渡した。捕らえた６人の為にやってきた者たちの中には、月華世界の住人もいる。その事に驚いていると、美咲紀が、夏夜が、真央が、修が、華夜が、その視線に気付き、微笑み返す。蛇那伊や遥斗、武道と紫、零も、暖かな眼差しで刹弦を見ていた。
「刹弦、俺の仲間を返して欲しい。お前の想いと同じぐらい、大切なモノなんだ」
刀が頭を下げて頼む。刹弦が僅かな抵抗を見せるように表情を険しくするも、冷気が巻き起こる事は無い。
「もう、争うのはやめよう」
修が、静かに刹弦へと言う。
「君は十分苦しんだ。……もう、苦しまなくても良いんだ」
優しい声に、夏夜と美咲紀がこくっ、と頷く。円も目を細めて笑みを向けた。寄り添う真央も……。刹弦は、暖かな言葉の数々に、いつの間にか涙を流していた。
「私は……愚かだった。最後まで彼女を信じられずに……」
はらはらと涙を零す刹弦を支え、円と夏夜、美咲は笑いかける。きっと解ってくれる、と。その言葉に、刹弦は静かに泣いた。
――『瑠香』、と１度だけ囁いて。
＊：＊：＊：＊
――刹弦。
私は、貴方だけを愛しているわ。
その事を、信じて欲しい、と言ってもだめよね。
でも……、それでも信じて欲しい。
＊：＊：＊：＊
「ん？」
ふと、ねむるは首をかしげる。不意に、真央の唇が動いた気がした。だが、遠くて聞こえづらい。でも、確かに何か聞こえたのだ。
「ねぇ、今、後木さんは何か言ったかな？」
「……何も、聞こえなかった気がするけど……」
近くにいた亮は不思議そうに首をかしげる。
しかし、真央と刹弦に寄り添っていた乙女達は、確かに柔らかな声を聞いていた。
「！ 真央ちゃんの口から似てるけど知らない声が漏れたのだ？！ こんな恥ずかしい言葉いえないのだ」
真央が少し赤くなっていると、刹弦がくすり、と笑う。だが、その目はとても優しい目をしていた。
「あんなやさしい子なんて知らないわ……」
一人の女性が、声を震わせて刹弦に言う。女性は夫らしい男性に支えられながら、刹弦へと静かに言った。
「お願い、私達をそっとしておいて。貴方にだけは絶対に言うな、ときつく言われているのよ」
その一言が、刹弦を更に困惑させる。だが、彼は後に知る。荒れ狂う神の怒りを静めるべく、想い人が『贄姫』として捧げられた事を。
「嘘だ……」
刹弦は絶望した。
『贄姫』を神に捧げるべく仕度を整え、薬を混ぜた酒を飲ませて神や祖霊の元に送るのは神官の役目である。刹弦の関わった儀式ではなかったが、そんなことは些細な事だった。刹弦の唯一の支えであった『彼女』は、既に神へ『捧げられた』後だった。
刹弦を含めその場にいた全ての者が呆然とする中、ねむるはもう一度口を開いた。
「彼女は、刹弦さんにとって自分が唯一の支えだと知っていた。だから、貴方を傷つけないように、先に嫌われようとしたんだ」
「そんな……」
刹弦は困惑するが、ねむるは穏やかな眼差しを向ける。
「信じていいよ。彼女は君の事が好きだった。多分……灯が消える最後の瞬間まで……」
その一言に、刹弦は身を震わせる。そんな彼に歩みよった者がいた。亮である。亮は当初刹弦と真正面から戦うと危険だから故に、説得を試みようと考えた。だが、今は違う。
彼はつけていたゴーグルなどを外し、「あんたと戦う気はない」と、武器を置いて素顔を晒した。
「あんたは、人を幸せにしたいんだろう？ それなら、どうして感情のある人達と深く付き合わないんだ？ 結局さ、正しい答えなんて色々体験してみないと解らないもんだろ？」
その言葉に合わせ、美咲紀が刹弦に駆け寄って手を握る。
「私は、刹弦さんを助けたい。……私達は、話し合い、事態解決のために歩み寄るべきだと思うのです。……手伝うといった言葉、嘘じゃないもの」
美咲紀が優しく微笑みかければ、刹弦は不思議そうに彼女を見つめる。
「刹弦が人の心を凍らせて奪おうとするなら、真央ちゃん、何度でもやりあうのだ。でも、それが刹弦の心が凍りついている所為なら、心を溶かしたいのだ。今更かもしれない。けど、話し合おう、なのだ」
真央もまた、刹弦に歩み寄る。彼女は背伸びして、刹弦の頬を両手で包み込む。
「……刹弦が、寂しくならない方法、一緒に探したいのだ。一緒にいこう、刹弦」
「いっしょに？」
真央の言葉に首を傾げる刹弦に、亮が言葉を繋ぐ。
「うん。寝子島に来てみないか？ あんたが前に居た場所は、性質の悪い連中ばっかりだったろうけど、幸いにも俺達の大半はお人よしだ。その証拠に……こいつらは『仲間』を助けに来てるんだ。ちょっとは信頼できるだろ？」
亮に釣られ、刹弦は周りを見渡した。捕らえた６人の為にやってきた者たちの中には、月華世界の住人もいる。その事に驚いていると、美咲紀が、夏夜が、真央が、修が、華夜が、その視線に気付き、微笑み返す。蛇那伊や遥斗、武道と紫、零も、暖かな眼差しで刹弦を見ていた。
「刹弦、俺の仲間を返して欲しい。お前の想いと同じぐらい、大切なモノなんだ」
刀が頭を下げて頼む。刹弦が僅かな抵抗を見せるように表情を険しくするも、冷気が巻き起こる事は無い。
「もう、争うのはやめよう」
修が、静かに刹弦へと言う。
「君は十分苦しんだ。……もう、苦しまなくても良いんだ」
優しい声に、夏夜と美咲紀がこくっ、と頷く。円も目を細めて笑みを向けた。寄り添う真央も……。刹弦は、暖かな言葉の数々に、いつの間にか涙を流していた。
「私は……愚かだった。最後まで彼女を信じられずに……」
はらはらと涙を零す刹弦を支え、円と夏夜、美咲は笑いかける。きっと解ってくれる、と。その言葉に、刹弦は静かに泣いた。
――『瑠香』、と１度だけ囁いて。
＊：＊：＊：＊
――刹弦。
私は、貴方だけを愛しているわ。
その事を、信じて欲しい、と言ってもだめよね。
でも……、それでも信じて欲しい。
＊：＊：＊：＊
「ん？」
ふと、ねむるは首をかしげる。不意に、真央の唇が動いた気がした。だが、遠くて聞こえづらい。でも、確かに何か聞こえたのだ。
「ねぇ、今、後木さんは何か言ったかな？」
「……何も、聞こえなかった気がするけど……」
近くにいた亮は不思議そうに首をかしげる。
しかし、真央と刹弦に寄り添っていた乙女達は、確かに柔らかな声を聞いていた。
「！ 真央ちゃんの口から似てるけど知らない声が漏れたのだ？！ こんな恥ずかしい言葉いえないのだ」
真央が少し赤くなっていると、刹弦がくすり、と笑う。だが、その目はとても優しい目をしていた。
シナリオ
シナリオデータ
- 担当ゲームマスター
- 前回シナリオ
- シナリオタイプ（らっポ）
-
- ブロンズシナリオ（100）
- グループ参加
-
- 3人まで
- シナリオジャンル
-
- 冒険
- バトル
- 神話・伝説
- 定員
-
- 15人
- 参加キャラクター数
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
-
- 2016年12月17日
- 参加申し込みの期限
-
- 2016年12月24日 11時00分
- アクション投稿の期限
-
- 2016年12月24日 11時00分
