＜月華＞月昂崩落　―捧げられた姫―｜リアクション

＜月華＞月昂崩落　―捧げられた姫―

「寝子島の『貰火』……。なるほど、力強さを感じます。刹弦や星華が浄化されかけるのも頷けましょう」
　愛憐は納得の行ったような顔をし、全員を見る。サキリ・デイジーカッターや尾鎌蛇那伊、優木遥斗が身構える中、愛憐は少し考えた上で微笑んだ。
「我が名は、『愛憐』……呪皇、愛憐。悲しき愛を憐れみ、救い、刃を握らせる者。再び貴方たちに合間見える日を、楽しみにしています。寝子島の『貰火』たちよ、私を討つ自信があるならば、いつの日か我が宮へおいでなさい」
　それだけ言うと、彼女は刹弦と星華を伴って背を向ける。
「まって！　あなたたちは……っ！」
　日暮ねむるが叫ぶも、彼らは姿をくらます。また、サキリも何か言おうとして言えず、肩を落とす。
　妙な静けさの中、仙藤紫は１つ深いため息を付いた。色々と状況は変化し、刹弦とは戦うことなく囚われた６人を助ける事が出来た。ここは撤収するのがいいのではないだろうか？　それは新田亮も同意見であった。
「今は、行こう。縁があれば刹弦たちを助ける事もできる筈だ」

　ここで、八神修は１つの事に気付いた。それは美咲紀が持っていた記録媒体がまだ動いていた事である。
「美咲紀、もしかしたら先ほどの出来事が全て映っているかもしれないよ」
「あ、もう止まったと思っていたのです！」
　２人は後ほどその音声を解析してみる事にした。

　その音声を再生した際、２人は奇妙な音を聞いた。それは、本当に僅かな音だったが、確かに硝子が割れるような音が、途中から混じっていた。理由はわからない。でも、背中に冷たい汗がにじむのがわかる。
「な、何なんでしょう……」
「わからない。だが、まるで何かを破ろうとしているような気がする」
　２人は、いやな予感を覚えるのだった。

＊・＊・＊・＊・＊

　冥晶宮から全員が戻り、高野有紀と町の人々は安堵と歓声で出迎える。そして、湯浴みを勧められた後、大広間での食事会と相成った。
　その途中で、華夜がにっこり笑って皆にこう言った。
「お兄様から連絡が入ったの。漸く、準備が整ったから祭が進められるって」
「お祭？」
　真央が首を傾げると、藍紗がゆっくりと頷く。
「元々、神々や祖霊、『贄姫』として捧げられた乙女達を慰めるための祭と近代の『贄姫』行列は平行して行われているのです。今回は、より丁寧に行おうと思います」
　その名も『春祈節』とよび、『贄姫行列』の２、３日前からお祭で盛り上がり先祖に自分達が健在であることや日頃の感謝を伝えるのだという。お盆やお彼岸に微妙に似ているが、どちらかと言うと雰囲気は旧正月っぽい。
　元々歴代の『贄姫』を鎮める為の弔いを、と進言するつもりだった零としては、嬉しい事だった。
「天狼族の皆さんは、この『春祈節』に合わせて復活宣言を行う事にしたの。祭の後は封じられた国を取り戻すために、魔物と戦う事になるわね」
　その時は力を貸して欲しい、と華夜が言えば寝子島の住人達はその表情を引き締めた。
　だが、この時……ふと、サキリは自分の頭に違和感を覚えた。ちらり、と窓に映る自分を見ると、白い虎の耳と尻尾が生えている。
「……なに、これ？　って、志波先輩にも耳生えてる！？」
「うそ！？　あ、ホントだー♪　ねむるくんは綺麗な赤い翼が生えてるネ☆」
「うわあっ？！　びっくりした！！　でも、なんか体がちょっと暖かい？」
　武道を見たサキリの声で武道は自分の虎耳に気づき、武道の指摘でねむるは自分の翼に気づく。よくみれば、その場にいた者たちが月華世界の住人の姿になっていた。
「……こう言う事は、初めてだな」
　麒麟と思わしき角を生やした修が興味心身で見ていると、遥斗は何気なく虚空に手を伸ばす。軽く念じただけで結界を生み出せた辺り、玄武族だろうか。
　白鋼たちもきょとん、としてしまったが、調べておく、という事で話がついた。

　だが、その食事の席から瓢は１人抜け出す。そして、ふぅ、とため息を付いた。作戦が失敗した場合、恐らく刹弦の雪でまた傷を負うことになっただろう。その姿を見た星華は、刹弦との間に諍いが起こるのではないか、と考えていたのだ。
　愛憐にも挨拶し、助命と影の力を求めるべく提案するつもりでも居た。だが、自分の中の何かが、影の力を拒否しているように思え、動けなかった。
（さぁて、どうしようかねぇ）
　瓢は１人結界を張り、その中でくすくす笑うのだった。

　（終）

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あとがき

担当マスター：菊華伴
ファンレターはマスターページから！

菊華です。
おまたせしました。『月昂崩落――捧げられた姫――』、お届けいたします。

まずは今回、ガイドに出てくださった後木真央さん、志波武道さん、御剣刀さん、まことにありがとうございます。

以下、まだお読みでない方はリアクションを読んだ上でお読みください。

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結果について
今回は、救援組も囚われ組もガチバトル！……の予定でした。
刹弦が吹雪となって凍りつきかけながら説得とか、燈耶の炎に巻き込まれながらの潜入！　とか。
全てアクションの兼ね合いにより、今回の結果が出ました。

とくに刹弦への対応。
ヘイトを稼いだから戦闘になると踏んでいましたがアクションを読み「あ……、これは説得という名のガチバトルだな」
と相成りました。

刹弦はあと一歩で浄化する所でした。
救援組、囚われ組双方で彼の『想い人』がどうなったのか、の予想が立てられていて感服いたしました。

＞『捧げられた姫』とは？

今回のタイトルにある『捧げられた姫』は３重の意味があったんです。
・囚われ組の女性陣
・藍沙（もしくは華夜）
・刹弦の想い人

……上記にあるとおり、場合によっては華夜（すいません、ガイドでルビ間違えました。正しくは「かよ」です）が捧げられる可能性も
実はありました。その場合は藍紗が責任を持って退位、変わりに青が即位して国が不安定になった所を影の貴人が雲の国をのっとる、という
シナリオになった可能性もあります。

＞燈耶
ニアピンです。
アクションに書かれた答えはニアピンです。その人の名前でも動揺するけど。
一番動揺する人物名を言わせたのは、複数のアクションを読んでいて「正解させちゃってもいいか」と判断した為
だったりします。

おかげで燈耶を精神的な意味で戦闘不能にしました。
今後は少しずつ掘り下げていくことになるかと思います。

＞ろっこんと月の光
今回ようやくはっきりとしまして。
ろっこんによって発生する光も、浄化の光となります。
また、もう１つよい方法があります。それについてはリアクションをご覧ください。

＞アンケート
実は、月世界の住人との絆が深まったので某ゲーム風に言えば「○ローラのすがた」っぽい雰囲気で
『月世界の種族』へ変身することができるようになりました。
今回、アンケートに回答してくださった方は、答えた種族に変身しています。
無回答の方は変身しておりません

以後、菊華が手がける月華シナリオ内のみですが、各種族に変身が可能です。
但し次の特徴とルールがあります。
・変身できる種族は、１シナリオにつき１種類のみです
　変身しないことも選択可能です（シナリオの途中での変身も可能）
・変身したからと言って愛憐の呪いの対象にはなりません（現段階では）
・同じ種族に連続して変身し続けると、種族としての力も上手に使えるようになります
・寝子島では月夜以外変身できません
・もれいびは『ろっこん』が使えます
　ひとは『ろっこん』がない分、種族の力が強めです

次回のシナリオから、変身可能です。
よろしくお願いします。

>総合的な結果
・藍紗を無傷で救出した
・燈耶を戦闘不能にした
・刹弦の怒りを静めた
などの結果により、『大成功』と相成ります。おめでとうございます。

そして
・刹弦が放った氷の棘は人の温もりによって心から除去出来る
・ろっこんが光を放つ場合、浄化の力を持つ
その他、『風花は、白く冷たき針』で後木さん、日暮さん視点で落ちた情報も含め全てのＰＣさん
に知られております。

次回は、お祭シナリオです。楽しんでくださいっ！
お祭シナリオを挟んだ上で、対呪皇へ向けて進んでいきます。

この時点でラスボス候補が１人減りました。
そして最悪エンド（月世界が崩壊）ルートも消滅しました。おめでとうございます。

それでは、このあたりで。また縁がありましたらお会いしましょう。
菊華　伴でした。

おまけ
参加者全員へ

共通称号：祈りの青、許しの蒼

取得：藍紗からの感謝状と、蒼い宝珠がついた勲章

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