自宅警備令！｜リアクション

自宅警備令！

旧市街、とあるアパートの一室。
真境名アリサは、コタツの中で幸せを満喫していた。
なにせ南国育ちの身、冬の冷え込みはちとキツイ。ちなみに、コタツはリサイクルショップでお安く購入したものだ。
「ああ……幸せ……」
コタツ半身をもぐりこませて、ぬくぬくとその暖かさという幸せを享受する。
コタツの暖かさを心ゆくまで堪能しながら、アリサはそのまままどろみの中に沈むことにした。
それから、どのくらいの時間寝ていただろうか。
ふと、ぐらぐらと揺れるような感覚がして目が覚めた。
「あ、地震……？」
コタツの上においてあった安売りみかんのカゴから、不安定な乗り方をしていたみかんが一つ落ちてぽてぽてと転がっていく。
電灯のひもも揺れているし、確かに地震なのだろう。
だけども、それほど揺れは強くなさそうだ。そのうちきっと止むだろうしと、アリサはそのまま眠りなおすことに、
「……やまないわね」
思いの外にやまない。いやそれどころか、次第に揺れが強くなっていっているような気すらする。
と、何かがぐらつく音がした。直後、頭の辺りに何かが落ちてくる気配。
流石に身体が縮み上がって、アリサは慌てて肩までコタツの下に隠れた。ごん、と小さく何かが床に当たる音がコタツごしにくぐもって聞こえた。
「ああもう、冗談じゃない！」
水着ガールズバーで働いているのに、怪我だのアザだのできたら商売あがったりだ。
「ここはやっぱり、安全のためにもこたつの中に引きこもるべきよねっ！」
そう自分を納得させて、アリサはそのままコタツの中にさらに深く潜り込んだ。地震の時は避難経路の確保が肝要なのだけれども、彼女には全くその気はないようだった。
そのうちに、地震の揺れは小さくなり始めた。
部屋が散らかってしまったけど、とりあえず後で片付ければ大丈夫だろう。
さあ、早速惰眠の続きを貪ろう……とコタツにまたしっかりともぐりこむアリサ。
だけれども、
「……？」
何か違和感を覚えた。
なんというか……コタツがさっきほど暖かくないような気がするのだ。
それどころか、どんどん寒くなっていっているような……？
「あれ？　なんか寒いんだけど。あれ、あれ？」
コタツから手を伸ばし、コタツの電源スイッチをオンオフする。だけれども、一向に暖かくなる様子がない。
「ちょっと！　なんでコタツ壊れちゃうのよ！」
こんな時に限って、エアコンのリモコンはコタツから離れた場所にある。
「仕方ないわね……」
寒さに身体を縮こまらせながら、コタツを出てリモコンを取りに行くアリサ。少しでも早く温まりたくて、自然と早足になる。
急にかじかんできた気のする指先で、リモコンのスイッチを、
「……あれ？」
スイッチを、
「……ちょっ、ねえ、嘘でしょ！？」
スイッチが、入らない。
エアコンまで、壊れてしまったらしい。
外でどこかのお店に暖を……いや、部屋の中でさえこれなのに、寒風吹きすさぶなか歩くなんて絶対に嫌だ。考えるだけで鳥肌が立ってしまう。
「こ……こうなったら絶対に、意地でも外に出ないんだからっ！」
熱の失われていくコタツに首までもぐりこんで、アリサは誰にというわけでもなく叫んだ。

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