漆黒の進撃・桜花寮篭城戦！｜リアクション

漆黒の進撃・桜花寮篭城戦！

――桜花寮・男子側

「なんや、またけったいな事に巻き込まれたな……」
　そう呟いたのは、須藤清一郎だった。彼は傍らにいた八神修、椿美咲紀と顔を見合わせる。
「でも、シュー君も須藤さんも、みんなもいます。がんばりましょう！」
　元気一杯に励ます美咲紀の姿に清一郎は「やっぱり可愛い子が側にいるとええな」なんて呟いてしまう。修は通常運行な２人の様子に苦笑しつつも、冷静に状況を把握する。
（３日間、光と水と食料が必要だ。……ならば、やる事は……）
　修は『まずやるべき事』を見定めると、２人に笑いかけたのだった。

　こちらにやってきていた８人もまた、落ち着いていた。その様子に相原まゆは感心したように頷く。
「みんな、すっごく冷静ね……」
　その言葉に、傍らにいた牛瀬巧は僅かに苦笑する。もれいびである事を隠している彼はその理由をおおよそ知っているが、『ひと』である彼女に上手く説明できない事を自覚しているからだ。
「今回は寝子島に似た世界に飛ばされたわね？」
　そう呟いたのは、たおやかな声色の尾鎌蛇那伊だった。彼は過去に異世界の月へ行った事がある。その縁もあり協力しようと真面目に頷いた。
　『異世界の月』の住人達は、事情を説明する。それを聞き、サキリ・デイジーカッターは窓から見える魔物を見、僅かに目を細めた。
（教会の時は敵一体だけだったけど今回は数で来たか）
　面白い、と小さな声で呟く。どうやら、状況が彼の闘争心に火をつけたらしい。サキリは皆を守り抜いてみせる、と決意を固めて懐に秘めたナイフに触れた。
「出来るだけ、電源を早く確保したいですねぇ」
　そう言ったのは、雑貨屋の主である天動記士郎。彼はポケットの中にある白蛇の鱗に触れ、寝子島の空の様子を見て心を落ち着かせる。厚い雲の上に広がる澄んだ冬の青空は、心の緊張を解し、背筋を正させる。
　部屋にあった案内板では、地下に壊れた発電機があるとの事だった。記士郎は、それを光源に出来ないか、と考えている。だが、修理するには道具が要る。それを探さなければ、と１人頷いた。
　同じように光源を手にしなければ、と考えた者がいる。ブリジット・アーチャーである。彼女は静かに記士郎が見ていた案内板を見つめる。
（状況を鑑みるに、まずは光源の確保ね。発電機の修理が終わるまで光源を絶やさないようにしないと……）
　確かに水も食べ物も大事である。だが、水は兎も角、人間、１日２日食べなくても死にはしないものである。水はどの程度確保できるか確認しておく必要があるが……。
「探し出す必要があるのは、光源と水ね」
　ブリジットは静かに呟いた。

　そんな中、1人違う事を考える者がいた。桜庭円である。彼女は窓から見える魔物を見、かつて結界に閉ざされた教会で遭遇した烏のような魔物の事を思い出していた。
（もう１度、話すことって出来ないかな……）
　正直な事を言えば、何故このような状況になったのか背景が見えない。魔物には魔物の事情があるのかもしれない。円は魔物の群れを見つめながら密かに接触を試みられないか、と考えるのであった。

　――こうして、彼らの篭城戦は幕を開けたのである。

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