漆黒の進撃・桜花寮篭城戦！｜リアクション

漆黒の進撃・桜花寮篭城戦！

３日目：午後

＜女子寮＞

　しゃらり、と濃い灰色の髪を揺らした冬樹闇は、覚悟を決めた。
（うちに、今、出来る事。それは……）
　彼は、自分のろっこん『玄武之舞・玄武亀甲陣』を発動させるべくお札を持って舞う。その華やかな舞に合わせ、黒依アリーセはハミングで清らかで和風なメロディーを奏でる。芸術科の人間として、なにか触発されたらしい。
（うちが、『光源』になること。電気は、復旧している。でも、発電機、襲われたら……）
　くるり、くるり。その場所がまるで別世界にきたような雰囲気を立ち上らせ、闇は只管華麗に舞う。寝子島の玄武の神主として、ろっこんを利用した守りの結界をつかってバリアとし、月の民も仲間も守ろうと真剣に、艶やかに、軽やかに。その足に感じる冷たさも苦にせず、闇は只管舞い続ける。
　狼の姿となったライメイとツムジの父子が、あわせて遠吠えする。同時に発せられる聖なる浄化の光。
（玄武亀甲陣も……実は光……。この光で……）

　みんなの思いも、命も、守る。

　闇の意思が、今まで込められてきた『光の番』の願いをくみ上げ、結界を生み出す。今まで保たれていた結界は、彼のろっこんによって強固なものとなった。

＜男子寮＞

「いよいよ、大詰めだな」
「そうですね」
　サキリ・デイジーカッターと椿美咲紀は、共に歩きながら頷きあう。光の番として回るサキリと、戦闘が起こったときの回復要因として待機する美咲紀。２人は、女子寮の方から清らかな力が流れ込んでくるのを感じながら、蛍光灯やら懐中電灯やらの具合をみていく。
「結界が弱まったら、戦闘ですよね」
「そうなったら、なったで僕はろっこんを使う。赤く輝く刃で、切り裂くよ」
　かつて、白虎の王・白鋼から貰った黒曜石のナイフを手にサキリは頷く。
「敵が狙うとしたら、生命線だろう発電機かな。まぁ、そこまで知恵がまわるかはわからないけど、警戒しておく事に越した事はないね」
「確かにそうですね～。これがやられたら、寮の照明は全部消えてしまいますから」
　美咲紀がため息混じりにそう言えば、サキリはその傍らで、文様が出た腕を押さえながら、静かに決意を固める。
（結界が維持できなくなった場所があったら、そこから椿や皆を遠ざけて安全な場所へ行ってもらおう。最後の防衛線で、僕は戦う）
　その時、２人は窓の外が妙に明るい事に気がついた。急いで外を見ると、厚かった雲が切り裂かれ、柔らかい金色の月光が周囲を照らす。同時に魔物は弱まり、その光の筋からはたくさんの人が降りてくるのが見えた……。
「援軍？！」
「それじゃあ……！」
　サキリと美咲紀は、ぱぁん、とハイタッチして喜びを分かち合った。

　３日間にも及ぶ篭城戦に、寝子島の住人達は、月の民と共に耐え切ったのである。

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