てへへのへ！｜リアクション

てへへのへ！

　森蓮は、今朝も寒さに負けず猫鳴館の裏庭菜園で植物の手入れをしていました。
　野菜にもいろいろありますが、蓮は栽培の難しい植物を育てています。
「枯れたように見えますが、まだ生きているかもしれません」
　そう言って水を与えていました。
　蓮はひとなので、ろっこんを使うことはできません。
　しかし日頃から、新しいことや難しいことに挑戦し続けています。　

　今日も蓮は、美化委員の校外清掃として、いつものように九夜山を清掃しています。
　先日、私立寝子島高等学校を最高の学校にする会(通称「寝子最高の会」)として、九夜山で自然学習を兼ねた清掃を寝子高生徒会に具申したのですが、残念ながら人が集まらなかったようです。
　結局今日も一人での活動となりました。
「普段は清掃していない登山道も掃除しましょう」
　と思った蓮ですが。
「ここは……どうやら道に迷ってしまったようですね」
　清貧を好む蓮は携帯電話を持っていませんから、ナビに頼るのはおろか、電話で助けを求めることもできません。
　それでも蓮は、挑戦を後悔したりしませんでした。
（私は今よりもっと困難に挑み、たくさん挫折したいです。挫折がないのは自分への過保護、危険を冒さないのは長い目で見ればより危険な事です）
　
　だからこそ、相撲部では小さな鍋で新しい鍋料理を調理したり、普段はクラシックを演奏している吹奏楽部でジャズの協演に挑んだりしているのです。
　失敗した料理は責任をもって食べましたし、ヴィオラでの即興演奏は周りのアドリブに合わせるのに苦労しました。
　それでも蓮はくじけたりしません。
「これもきっと、将来人の役に立つためのいい経験になることでしょう」　
　地面に目印を書いたり、林の様子をよく観察したりして、ようやく知っている道にたどり着いた時には予定より大分遅い時間になっていました。

「おや、あれは何でしょう」
　猫鳴館への帰宅途中、蓮は海岸のほうで何かが爆発したかのように広がるのを見た気がしました。
「様子を見てきましょう」
　後日海岸の清掃もしたいですし、と思っている蓮です。

　寒く暗い砂浜に近づくと、人影がありました。
「森か」
　それは、蓮のよく知っている人物——１年５組のクラスメイトの修でした。
「修さん、どうしたのですか」
「ちょうどいい、ひとである森ならろっこんの暴発を抑えられるかもしれない」
　寒さをこらえている様子の修は、蓮から砂浜に目線を落とし、なにやらほっとした様子でした。
「もう大丈夫のようだ」
　ろっこんの暴発であちこち陥没した砂浜を原状回復させようとした修ですが、動く傍から次から次へと暴発が起こるありさまで、帰るに帰れずにいたのでした。
「寒そうですね。何か暖かいものでも飲みませんか」　
「そうだな……ありがとう」
　
　こうしてようやく、修と蓮は帰路についたのでした。

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あとがき

担当マスター：茄子りんこ
ファンレターはマスターページから！

ご参加ありがとうございました。
平日の予定でしたが、休日のほうが都合のよさそうな方が多かったので休みの日とさせていただきました。

様々な失敗を拝見して、自分だけじゃないな～、てへへと安心した茄子です。
失敗は成功の母とも言いますし、失敗が生む縁もありそうです。
くじけず、失敗を楽しんでいきましょうか。

今回はコメディエアーの影響を受けていますので、普段この形でのろっこんの発動・暴走は難しいこともあります。
ご了承ください。

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