てへへのへ！｜リアクション

てへへのへ！

　うっかりろっこんを発動させてしまい、服が木の枝にひっかかって吊り下がってしまった鈴原天音。
「あははー、やっちゃったんだよー。うっかりろっこん発動させちゃうとはねー、てへ☆」
　楽しんでいるかのような天音ですが、はたと気づきました。
（……ところで、この状況どうしよう）
「お、降りられないんだよー！　誰か助けてー！」

　そこへ、背の高い男性が歩いてきました。
　銀色の髪と鋭い眼光で不良と誤解されがちな、滝原レオンです。
　吊り下がっている足に気づき上を見上げれば、そこには幼馴染の妹である天音の顔がありました。
「……天音、何してんだ？」
　レオンは慌てるでもなく尋ねました。
「あ、れおにーちゃん！　いいところに来てくれたんだよ！」
　小さい頃からの知り合いで、兄同然に慕っているレオンの出現に、天音はほっとしました。
「じ、じつはかくかくしかじかでー……」
　これまでの経緯を説明します。
「……なるほど。うっかりろっこんを発動させて飛んじまって枝に引っかかって降りられなくなった、と」
「そうなんだよー！」
　説明を聞いて、レオンはしれっと言うのでした。
「で？　俺にどうしろと？」
「要するに、降りるの手伝って欲しいんだよー！」
「なら早く言えばいいのに」
「早く気づいてほしいんだよー！」
「……仕方ねえなぁ……はあ」
　レオンは、辺りに人がいないのを確認してからカバンから白うさぎのぬいぐるみを取り出しました。
「ましろ、枝から服を外してやれ」
　ろっこん『おとぎの軍勢』が発動し、ましろと呼ばれたうさぎのぬいぐるみがちょこちょこと動き出し、樹に登って枝にひっかった服を引っ張り始めました。
『ましろ』は家に大量にある自作のぬいぐるみの中でも、レオンの一番のお気に入りなのでした。
　これで解放される、と安心した天音でしたが。
「くぅ、な、なかなか外れないんだよ……！」
「な、なかなか外れねえな」
　風船がひっかかっているのとは違い、服には天音がぶらさがっている体重がかかっています。
　それをましろが小さな体ではずそうというのですから無理がありました。
「は、早く降ろしてなんだよー！」
　服を引っ張られて苦しい天音は、じたばた暴れだしました。
「おいバカ暴れるな！　枝が折れ……！」
　そうレオンが声を上げたときには。
「え？……うわー！」
　枝が折れ、天音は落下していました。
「は？　うわあぁぁ！」
　ちょうど天音の落下地点にいたレオンは、見事天音をキャッチしました……が。
　そのままよろけて、尻餅をつきました。
「あ痛たた……な、ナイスキャッチなんだよ、れおにーちゃん。」
「ナイスキャッチ、じゃねえよ……いてて……」
　お尻をさすって立ち上がるレオンでしたが、幸い二人ともケガはないようです。

「はー……なんとか一件落着、か？」
　レオンはまだ木の上でおろおろしていたましろを呼び戻し、カバンにしまいます。
「いやー、れおにーちゃんのおかげで助かったんだよ♪」
　にこにこと天音は言いました。
「ありがとなんだよー、お礼に何かおごるねー」
「マジで？　じゃあファミレスでパフェな」
　レオンの鋭い眼光が和らぐのを天音は見ました。
「りょーかいなんだよ！」
　びしっと敬礼を決め、いたずらっぽく笑う天音でした。

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