シャンシャンシャンのその前に｜リアクション

シャンシャンシャンのその前に

　――クリスマスに、夢なんてない。

　誕生日がイブ前日だったから、自分だけのケーキも玩具もなかった。

　デパートの玩具売り場は華やかだったけど、どこかうすら寒かった。
　包装紙はつやつやして、サンタとツリーの柄を見てると、余計寂しくなった。

　財布からクレジットカードを抜き取る母親。
　おもちゃを手渡してくれるのは、サンタさんではなく、忙しそうな店員だった。

（弟妹は、誕生日プレゼントもクリスマスプレゼントも、ケーキ付で買っていたのに）

　誰も悪意がないのはわかっていたし、仕方ないのもわかっていた。
　プレゼントは、誕生日とクリスマスを兼ねて、それなりに豪華なものだった。
　我慢しているわけではなかった。

　それでも――。

　弟妹と違って、一人だけプレゼントを一回しかもらえなくて。
　少しだけ豪華なプレゼントも、結局自分専用で使えることもなくて。

（私は――）

（私は、嫌だった）

　嫌だった。
　クリスマスと誕生日を、一緒にされるのが。
　プレゼントに、ほんとに欲しいものがもらえないのが。

（だから私は）

（おじぃの家で）

（叔父貴が、２回ショートケーキを買ってきてくれるようになるまで）

　気を利かせてくれた叔父貴。
　食べきれなくても、ちゃんと２回お祝いしようって、ケーキを二つ用意してくれた。

（あの時まで――）

（クリスマスが、嫌いだった）

　本当に欲しいものが、もらえなかったから。

　――本当に欲しいもの？