シャンシャンシャンのその前に｜リアクション

シャンシャンシャンのその前に

「――トナカイ姿の、テオ君……」

　二人（一人と一匹）の様子を見て、恵御納夏朝が合流する。
「えみな、買い物は楽しんでるか」
「トナカイなテオ君、可愛い……！」
　見事な俊敏さで走り寄ると、ぐっと顔を近づける。
　猫好きでは人後に落ちぬ女子二人、レアなテオの姿に興味深々である。
「そ、そんなに見るな……」
　ぐっとフードを下して、顔を隠そうとするテオ。
「入口にいるから、トナカイ姿の招きにゃんこですね」
「テオ君の貴重な着ぐるみ姿……」
　夏朝は、懐からＮｙａｐｈｏｎｅを取り出す。
「ああ！　そいつは駄目だ」心なしか嬉しそうに、テオが言う。
「テオ君の写真……撮っても、いい？」夏朝が尋ねる。
「残念だが、Joulupukkiは撮影禁止だそうだ！　デリケートな商品が多いからな！　いやー、残念！　俺も一枚くらい、撮って欲しかったんだけどな！」
「じゃあ、店の前なら」
「店員さん、店頭での写真撮影、したいんですけど……良いですか」
「オッケーです！」
「おい待て！」
　ミルカの明るい返事に、抗議するテオ。「……そうだな。けど……こう寒かったら、表で撮影なんか、気乗りがしねえな……」
「店員さん、フラッシュ焚かないから、店内で撮影しても良いですか」
「オッケーです！」
「待てええええ！！！」
　ミルカの明るい返事に、絶叫するテオ。
「嫌がるなら、あきらめるけど……」
「まあ、そう焦るなよ」
　Nyaphoneをしまおうとする夏朝を、テオは呼び止める。

「……一枚だけだぜ」

「うう……」
　撮影を終えてから、フードを被ったままテオは微動だにしない。
　ノリノリの二人に乗せられ、結構な枚数を撮ってしまった。
　ポーズもつけてしまったかもしれない。
　また、黒歴史が生まれてしまった。
「ちょっと、一杯くれないか」
　テオは朱蘭を呼び止める。
「飲みたい気分だぜ」
「日中のろっこん水の提供は、お断りしております」
　にべもなく断る朱蘭。