冬の色に贈る｜リアクション

冬の色に贈る

最後に立ち上がったのは瑠奈。
瑠奈は歌うように軽やかに、優しげな声色で朗読を始めた。

『　ひえてゆく　おちてゆく　つもりゆく
きえてゆく　かわりゆく　ながれゆく

それはすべてをおおういろ
それはすべてをかえるいろ

みえなくなってみえるもの
みえなくなってみえるもの

それはだいじなことだから
きっとだいじなことだから

みえないからこそみえるもの
みえないからこそみえるもの

それはおやすみのいろ
それははじまりのいろ

みえなくなってたちどまり
みえなくなってうごきだす

みえなくなってもわすれないで
みえなくなってもわすれないで　』

韻を踏むようなリズム感に、教室から感嘆とも取れるため息が漏れた。

「言葉じゃわかりにくいけど、２行でワンセットなんです。
最初の１行が雪の白が世界を覆っている日のこと。あとの１行が雪解けの水が流れる透明な日のこと。
自分の心が雪に覆われて真っ白になって見えなくなっても、その奥底に真実があることを忘れないでほしい。
そしていつかはその雪が解けだし、流れていって、隠されていた真実がみえるようになるはずだから。
だから、心を覆い隠す雪を恐れないで。受け入れて、悩んで、雪解けの日を待って。
溶けるまでの雪は、きっと無駄じゃないから。心を埋め尽くす白にも、きっと理由があるから」

瑠奈は胸元に手を添え、心地よい声で、まるで小さな子に伝え聞かすかのように言葉を紡ぐ。

「心の動きのイメージと、雪が積もってから溶けていくまでの風景のイメージを重ねてみました」
「夢宮さんらしい雰囲気の詩だったわね」

久保田先生の言葉を合図に、教室中から拍手が溢れる。
瑠奈は笑顔で一礼をすると、席に着いた。

*

「さて、これでみんな発表してもらったわね？」

久保田先生の問いかけに教室からは肯定の反応が返ってくる。
その声に満足そうに笑うと、同時に、終業のチャイムが鳴った。

「少し意外だったのは、みんなの詩が暖かい色のイメージが多かったことかな。
もっと冷たい色とか、暗い色のイメージもあるかと思ったけど……。でもみんなのイメージしてくれた色の方が優しくて、私は好きだな！」
「美和チャンせんせーの授業、とっても楽しかったノ！」

元気よく両手を挙げたセレッソの言葉に、嬉しそうに久保田先生は手を振りかえす。

「次も楽しい授業になるよう頑張るね！じゃあ今日の授業はここまで！」

「ありがとうございました！」

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あとがき

担当マスター：時織椎
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改めまして時織です。
日常の授業に一コマ、楽しんでいただけたら幸いです。
なにかと喧噪の多い今日この頃、いつものゆっくりと時間の過ぎていく日常も、素敵ですね。

ちなみにリアルクリスマスシーズンはひとり見知らぬ地に出張にでておりました。
そこで食べたクリスマスチキンならぬクリスマス焼き鳥を焼く炎の赤が時織の今思う冬の色でございます。

それでは皆様、ご縁がございましたら次回もよろしくお願いいたします。

時織

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