サンタクロースの贈り物～サタン・クロース！～｜リアクション

サンタクロースの贈り物～サタン・クロース！～

「これはこれは勇者様、随分と派手なご登場ね？」
　水樹は、玉座に足を組んで腰掛け、現れた修とタイガに妖艶に微笑む。
　絵奈がサタンクロース城を立ち去ったのをしっかりと確認後、城に結界を張り、時間を稼いだのだ。
　だがしかし、結界は派手な爆音と共に吹き飛んだ。
　ねむるが城のあちらこちらに仕込んでおいた爆薬が起動したのだ。
　水樹が結界を張り巡らせていなかったら、城ごと吹き飛んでいたかもしれない。
「城内がとても静かでね。もっと手厚い歓迎を期待していたんだが」
　城内のモンスター達は先の勇者達にあらかた撃退されていた為、結界さえ解かれてしまえば、この魔王の間までノンストップ。
　辛うじて残っていたモンスター達では、修とタイガに敵うはずもない。
「世界の半分をやろうというのは、こういった世界の常套句よね。でも、あなたは決して頷かない。それもまた、当然よね？」
「そうだね。この日が来る事は、わかっていた事だろう？」
　修は水樹に向かい合い、タイガは人化して修の隣に控える。
　最強たる魔王と、勇者。
　勝利をつかむのは、果たしてどちらか。
　修が剣を繰り出せば、水樹もそれに呼応し、魔法剣で応戦する。
　幾度となく刃を交え、火花が爆ぜる。
（やはり、魔王たるもの、そう易々とは討ち取れないね）
　修がタイガに目配せする。
「タイガ、出来るかい？」
「もちろんニャ！」
　修が呪文詠唱を始め、タイガは一人で水樹と対峙する。
　水樹が修に近づくことを決して許さず、鋭い両の爪が水樹の物理攻撃を跳ね返す。
　だが、魔法攻撃は――。
　水樹が詠唱を終えたのと、修が詠唱を終えるのは、ほぼ同時だった。
「出でよ、カーバンクル！　すべての攻撃をその魔力を持って跳ね返せ！」
　……。
　………。
　…………？
　何も起こらない。
　水樹と修と、そしてタイガが顔を見合す。
　次の瞬間、

『にゃーんにゃーんにゃーん、お仕置きにゃー☆』

　天井がぱくっと開き、サンタ服着用のお仕置き子猫さま、出現！
　お仕置きにゃー、お仕置きにゃーと鳴きながら、修に群がった！
「待ってくれ。この能力は、魔王のなんだ」
　驚く水樹を、びしっと指差す修。
　うんうんと頷くタイガ。
　お仕置き子猫さま達、修にくるっと背を向けて、一気に水樹に飛び掛った！
　悲鳴を上げる水樹。
「とっても、いい子達だね」
　お仕置き子猫さまを一匹拾い上げ、ちゃっかり撫でる修。
　ビーストテイマーのスキルを所持しているからか、はたまた現実世界での修の動物に好かれまくる特殊体質がここでも働いたのか。
　お仕置き子猫さま、ゴロゴロと喉を鳴らして修にされるがままになっている。
「あー！　ボクも撫でてほしいニャ！」
　タイガが目聡く見つけて、即座に人化から虎姿に戻り、修に擦り寄った。
「あぁ、大丈夫だよ。一番好きなのはタイガだからね。沢山、ありがとう」
　お仕置き子猫さまを床におろし、修はタイガの大きな首周りをぎゅうっと抱きしめる。
「ちょっ、こら、耳たぶ舐めないのっ！　『抱っこしてにゃー！』じゃなーいっ、どさくさにまぎれて魔力全部奪うんじゃないわよ、こんなの戦えないでしょ可愛すぎだわ！！！」
　水樹の悲鳴が、いつまでもいつまでもサタンクロース城に響いていた。

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