限定☆クリスマスコフレをゲットせよ！｜リアクション

限定☆クリスマスコフレをゲットせよ！

●コスメの魔法は君のもの

　ｍｉａｏのカフェでお茶をしていたのは長月蒼だ。カフェに置いてある雑誌を捲りながら、美味しいケーキと紅茶を楽しんでいた。蒼のページを捲る指先が止まり、食い入るようにある特集が組まれたページを読み始める。それはクリスマスコフレの特集ページで、有名ブランドの物からプチプライスで買えるブランドの物まで幅広く網羅されたものだった。

「クリスマスコフレ……しかもFairy taleの……！」

　絶対に手に入れなければ。
　蒼は残っていた紅茶を飲み干し、オーダー票を持ってレジへと向かう。ファーティペットの付いたピンクのフリルがあしらわれたショートコートを羽織り、レースアップデザインのフレアシルエットのスカートにファー付きのゴアブーツを履いて艶やかなストレートロングの髪を揺らす美少女にしか見えない蒼は男の子だ。
　女装が趣味で、自分を可愛く見せる為ならどんな努力も厭わない彼の持論は――可愛くあるためにはお洒落や化粧にも敏感でなくちゃならない、だ。ならば彼が「Fairy tale」のクリスマスコスメを手に入れるのは当たり前のこと。エスカレーターに乗り、化粧品のフロアを目指す。
　「Fairy tale」のショップに着くと、中学生くらいの女の子達が楽しそうに商品を見ている。そこに混じるように蒼もクリスマスコフレに手を伸ばす。今回のコフレはパールピンクかパールホワイトのポーチを選び、そこに自分の気に入った色のリップクリーム一つとネイルを三つとピンク系のチークを入れて購入するというもの。
　蒼はさっそくピンクのポーチを手にし、綺麗にディスプレイされたリップとネイルカラーを一つ一つ吟味するように選んでいく。

「リップも限定色だしケースも今回の為のものか……ネイルも瓶が限定品だし、付いてる名前も可愛いのばかりだね」

　童話をイメージさせる名前の付いたそれらを選ぶのはとても楽しく、蒼は知らずの内に笑顔になっていた。化粧品を選ぶのは楽しい、そしてそれを使って可愛くなる自分はもっと楽しい！　そう考えながら、蒼の選んだリップはほんのり淡いピンクに色付く物。ネイルカラーは透明感のあるヌードカラーなピンクベージュとオレンジベージュ、アクセントになるシルバーラメの三本だ。チークは薄付きのフレッシュピンクで蒼の抜けるような白い肌に合うだろう。
　蒼が選んだリップのケースには小さな小鳥があしらわれ、ネイルカラーの瓶は王冠をモチーフにしたもの、チークは赤いハートに鍵穴のマークのコンパクトケースだ。
　自分のチョイスに満足しながらレジへと並ぶ。会計を済ませ、渡されたショッパーは淡いピンクにアールヌーボー調のデザインで、それを持って歩くだけでも可愛さが上がるような気がして蒼は上機嫌なまま歩き出す。

「ふふ、ますます僕の可愛さに磨きがかかってしまうなぁ」

　誰にも聞こえないような声でそう笑い、ついでに他の化粧品とかスキンケア用品も見て行こうといつも使っている化粧品のショップへ足を向ける。
　新しく出た洗顔料も気になるし、新作コスメのファンデーションだってチェックしたい。そういえば新しいチークブラシが出たはず……考え出すとキリがないけれど、可愛さの道は一日にしてならずだ。お手入れを少しでも怠れば、それは翌日の結果として肌に出るのだから。

「これからも頑張って自分磨きを頑張らなくちゃね♪」

　小悪魔の笑みを浮かべて、蒼はコスメという名の魔法を手に入れる為に女の子達の中へと消えていった。

このページにイラストを設定する