【お三夜】にゃんと奉納猫レース！｜リアクション

【お三夜】にゃんと奉納猫レース！

「あぶないっ！」
　桜庭円は、車に突っ込みそうなにゃーくんの尻尾を掴んで止めました。
「にゃーくん。車は本当に危ないから注意だよ！」
「そっかー。ありがとー」
　お三夜まつりのことはくわしいにゃーくんですが、人社会のことはまだまだ学ぶべきことがあるようです。
　それにしても、円は辺りをきょろきょろしながら戸惑いが増すばかり。
「この辺りの道はわかるけど……猫の視点となるとどうも……」
「車がなければいいのー？」
「うん、教えて教えて！」
　にゃーくんが猫ならではの細い道を案内して、ここからはすいすいーっと進む二匹でした。
　が、ついにここで現れました。

「ぐへへへ～」

　たっぷんたっぷんの腹を揺らしながら、ボン太ブラザーズのボン・ボンがやってきました。
「おいおい、前にいるあいつら、誰だあ？　ここは俺様の道だぜ～？」
　どどどどど。
　体当たりするつもり満々で走ってきました。
　円はすかさず魚をおろすと、
「ふんっ。にゃーくんは守る！」
　と振り向いて、猫パンチ！
　人間のときにボクシング部に所属していたおかげか、実に的確にボン・ボンのチンに炸裂！
「ぶぎゃべっ」
　あっさりぶっ倒れてしまいました。
「すごーい！」
　にゃーくんは円の見事なパンチに目をぱちくり。ますます二匹の絆は強くなるのでした。

　さて、トップ集団は既に寝子島神社の境内、人混みの中を進んでいます。
　人の多い参道商店街を避けてここまでやってきた綾辻綾花は、スロープをダッシュ。
　新井すばるもようやく追いついて、境内をか駆けています。
　十朱此方も、すっかり慣れた猫の体で軽快に障害物を飛び越えて進んでいきます。
　そしてすぐ後には、第２グループも迫っていました。
　天満七星、白浜渚、御剣刀、八神修。少し遅れて、三宅葉月と桜庭円と続いています。
　恵御納夏朝はさらにずっと後ろを、のんびりのんびり進んでいました。第２２グループくらいでしょう。

「ボン・ボンがやられた？　弟よ……お前の仇は必ず俺が！」

　というわけで、ボン太ブラザーズの残り、ボンカ・レーが猛烈なダッシュで砂ぼこりを巻き上げながら追い抜き、トップ集団に迫ります。
「俺の邪魔をする奴は、何人たりとも許さねえー！」
　トップ集団はあと少しで本殿に辿り着くところですが、ボンカ・レーの脅威の追い上げに、思わず警戒して歩を緩めてしまいます。
　しかし、そんな中でもひたすら前を向いて走るのは、此方。
　彼女には、秘策がありました。
「ここまできたら、負けないっ！」
「あああ？」
　体当たりで蹴散らそうとするボンカ・レーの前から、此方は突然姿を消してしまいました。
　そう、ろっこん＜transparent＞が発動したのです。
　戸惑うボンカ・レーをよそに、綾花とすばるもその脇をささっと駆けていきました。
「なんじゃああ～～」

　さあ、本殿に入って、お三夜さまの像は目の前です。

　再び姿を現した薄茶猫の此方、お三夜さまにそっくりな綾花、ちくわ猫のすばるの３匹に絞られたようです。
　と、目の前に現れたのはボス猫ボン太！
「最後の難関は、この俺だ！」
　と立ちはだかり、３匹はピンチ！
　一気に第２グループにもチャンス到来！
　スリム黒猫の七星が大胆に、白猫の渚はここでも慌てずに落ち着いて、黒猫の刀はしっかり魚に歯を立てて、銀縞猫の修はタイガとシンクロして座布団を飛び越え、翠がかった黒猫の葉月はしっかり確実に、黒猫の円はにゃーくんの前で猫パンチを構えて……一斉にボン太へ、そしてその先のお三夜さまに迫ります。

　表では此方を見失って動揺したボンカ・レーが賽銭箱に激突、そのはずみで高く舞い上がって鈴の紐にひっかかり、ガラーンガラーンとゴールの鐘を鳴らしていました。

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