猫鳴館、自治会長選任戦・秋　～みんな熊になれ！｜リアクション

猫鳴館、自治会長選任戦・秋　～みんな熊になれ！

●エピローグ

「みんな……お疲れさま。お湯沸かしておいたから、拾ってきた栗は入るだけ大鍋に入れて。手の空いてる人は皮むきを手伝って。栗ごはんと、栗のうま煮と、デザートに栗ぜんざい作るから」
　先に戻って朝食の準備をしていた夏朝がてきぱきと指示をする。
　その後みんなは大部屋に集まった。ちょっと時間はかかったが、今朝のごはんは栗三昧。
　みんなで輪になり、いただきます！
　雰囲気はなごやか、美味しいものはみんなの気持ちを和ませるようだ。
「熊鍋が良かったですが……栗ごはんも悪くないですね～、村雨？」
　切奈が村雨にひとくちおすそ分けをする。
　月乃は文字入りネタＴシャツに着替えていた。それがたまたま「（物理）」だったものだから、物理大好き少女の朝陽の目に留まり、ふたりはすっかり意気投合した。ちなみにジャージの下に着ている朝陽のＴシャツには「女子力」、あとちっちゃく「（物理）」と書いてある。似たり寄ったりだ。
「藤堂って、私より女子力ありそうだぜ」
「そんなことないよ。朝陽ちゃん、胸も大きいし可愛いんだから……胸も大きいし……」
「泣くな！　泣くなよ藤堂！　女子力は胸じゃねぇ！　物理なんだよ！」
「そ、そうだね！　女子力は胸じゃない！　物理だよね！」
　力強く手を握り合うふたりの向こうでは、割烹着姿の解理が、めちゃくちゃな勢いでご飯を掻っ込む雅也を叱りつけている。
「僕も手伝ったんだぞ！　栗の皮、剥くの大変だったんだから味わって食え！」
　そこに信彦が茶々を入れる。
「おお～解理ちゃん、そのコスプレ似合うよ。どうだい今度コスプレ部に……」
「コスプレちゃうわぁ！」
　カッとした解理は目つきの悪い銀丸に八つ当たりした。
「睨むな！」
「……睨んでねぇ……ぺちゃんこを透かし見たりしねぇし」
「ぺちゃんこちゃうわぁ！」

　そんな中、普段着の野良着に着替えた荒太郎がみんなにお茶を注いで回っていた。
「おつかれさまでした、お茶を入れましたのでさぁどうぞ召し上がっていってください」
　まだ口調が丁寧なままで、蓮の真似が抜けきってないらしい。
　朝食のご相伴にあずかることになった超優秀な黒子集団のみなさん――その正体は茂の同級生の友人たちであったが――は、荒太郎からお茶をいただき、ははあ、どうもどうも、とありがたそうである。
　茂にお茶を注ぎながら荒太郎はいった。
「人が足りないなら、俺、自治会員になってもいいかなーって思ってるんですが」
「それはぜひ頼む。新自治会長を支えてやってくれ」

◇

　食事のあと、寮内は掃除タイムになった。
「ゴールした時熊じゃなかった奴は今日の掃除当番って言ったよな。さすがに寮生じゃないやつを当番にするわけにはいかないから……」
　といって士が呼び集めたのは次の面子。
　小刀祢切奈、藤堂月乃、桜崎巴、骨削瓢、兵藤雅也、浅井卑弥呼、綾辻綾花、後木真央、南雲銀丸。
「あと、俺な」
　巴なぞは、自分が掃除当番で信彦がお客扱いなのは納得がいかないなどとぶーぶー文句を言っていたが、人数が多かったので箒掛けも雑巾掛けもトイレ掃除も手早く済んだ。
　こうして掃除が済んだ後、士と明里は、玄関前の自治会室で引き継ぎをした。

「橘にはこの、代々自治会長によって引き継がれてきた『猫鳴館の鍵束』を授与する」

　士は勿体ぶった手つきで古びた鍵束を明里に渡す。
「あかずの間に毎月お供え物をするのを忘れないように」
　茂から引き継ぎがなかったことで起こった騒動を、ため息交じりに思い出しながら士は言う。
「あとこっちが書類。これが歴代の資料で、こっちが始末書、で、こっちが……そのほかに注意事項で……」
「ぴぎゃー！　そんなにいっぺんに覚えられないのよ～」
　書類魔でしっかり者だった士に次々説明され、早くも涙目になる明里であった。

◇

　――こうして、秋の猫鳴館選任戦は幕を閉じた。
　陽はすっかり高く昇り、空には細い飛行機雲が一筋たなびくばかり。
　瑠樹はみんなからお土産に栗を貰い、幸せな気持ちで猫鳴館を後にしようとしていた。
　早起きをしすぎてしまったせいか、とろんとしてきた瞼を擦る。
　左手は叔父の鴻と繋がれている。瑠樹はオンボロの建物を振り返った。
「そっかぁ……ここ、寝子高の寮の一つなんだねぇ」
　……それからぎょっと目を瞠る。
　玄関前に、熊の頭を五つも重ねたトーテムポールが立っている。
「なんだこれぇ？」
　するとトーテムポールがもぞもぞ動いた。
　五つ目の熊の下から顔を出したのは、可愛らしい少女――綾辻綾花だ。
「うわぁ、びっくりした！　お姉さん何してるの！？」
「じつはその……どうしても熊のトーテムポールになってみたくて……」
　綾花はちょっと恥ずかしそうに頬を染める。
「そうなんだぁ。すごくかわいい！　びょーめいかんっておいしくて、かわいくて、おもしろいんだねえ」
　ぬいぐるみ好きの瑠樹は綾花に抱きついて、きらきらと目を輝かせた。
「オレもいつか寝子高に入ってびょーめーかんに住みたいなぁ！」

　――鴻はにわかに心配になった。
（こんなおかしな所に入るなと止めるべきか、面白いから入れと勧めるべきか……それが問題だ）

　秋の空は青く澄み、山を彩る紅葉が綺麗だ。
　猫鳴館は相変わらず。
　オンボロの佇まいにカオスな寮生を抱え込んで、九夜山の麓に建っている。

＜了＞

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あとがき

担当マスター：笈地行
ファンレターはマスターページから！

猫鳴館の皆様、遊びに来たり巻き込まれたりなさった皆様、２度目の選任戦、お疲れ様でした。
新たな自治会長さんにお祝いの言葉を述べる前に一言いわせてください。

＼　みんな、どんだけリアル熊と戦いたいんだーーーー！！！　／

対リアル熊アクションの多さに、これが猫鳴館クオリティかと天を仰いだマスターがいましたよ・笑

ということで、新自治会長さん、おめでとうございます！
どながが自治会長になられたかはリアクションをずずいと読んでいただくとしまして……。

どのチームも手が込んだ作戦で挑んでくださっていて混戦・接戦だったのですが、
瀬戸際で作戦勝ちだったなーという印象です。
魑魅魍魎はびこるカオスな猫鳴館でご苦労もあるかと思いますが頑張ってください。
残念ながら今回は敗退したみなさまも立候補してくださりありがとうございました。
お蔭様で盛り上がりました。

また、らっかみ！タイムで半年間、自治会長を務めてくださった邪衣士さんには
この場をお借りして改めてお礼を申し上げたいと思います。お疲れ様でした！
邪衣さんには差し支えなければ、海原君と同じ監査役として自治会に残っていただき、
新たな自治会長さんをサポートしていただけたらありがたいです。

　【業務連絡】----------------------------------------------------------------------------
　　自治会員（猫鳴館の自治をサポートする人）には寮生であればいつでも誰でもなれます。
　　肩書きや自由設定のどこかに「猫鳴館自治会員」とお書きいただき、
　　掲示板やシナリオで自治会員としてロールプレイすることが可能です。
　　----------------------------------------------------------------------------------------

さてみなさん。こうしてまた、猫鳴館の歴史が一ページ刻まれました。
これからもみんなで猫鳴館を盛り上げていきましょうー！

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