あなたのお仕事！｜リアクション

あなたのお仕事！

　城山水樹、20歳。
　彼女は大学に通いつつ、某雑誌の読者モデルをやっている。

「～♪」
　今日は都内のスタジオで撮影の日。
　朝6時に起きた水樹がすることは、シャワー・洗顔・髪やお肌の手入れなどの身支度。体が資本なので、ストレッチをして体をほぐしつつ、鏡で自分の状態をチェック。
「……うん」
　ベストに近いコンディション。悪くない。鏡の中の笑顔に自信を持つ。撮影が楽しみだ。
　――今日はどんな私と出会えるのかな？
「水樹ー」
「あ、うん。今行くわ」
　今いるのは、仲良しのモデル仲間の家。前日から泊まらせてもらっている。
「ご飯食べよ。調子どう？」
「良い感じ。今日はスタジオ近かったよね？」
「うん。途中まで一緒ー」
　二人でヘルシーな朝食を取ってから出発する。モデル仲間は別の場所で撮影のため、途中で別れる。１時間ほどしてスタジオに到着した。
「本日も宜しくお願いします」
　今日はファッション誌の特集記事の撮影。発売は来年の１月だが、今回は表紙も飾る。
　当然、要求されるものも多い。水樹の声にも、いつもより力が入る。
「おはようございます！」
　スタッフひとりひとりに笑顔と挨拶。ちょっとしたことだが、気持ちよく同じ場所で仕事をし、いい結果を生む。
　足は止めない。到着すると足早に控室へ。すでに他のスタッフが準備を整えていた。
　ここで行うのはヘアメイクやフィッティング、そして着替えなどなど。
　メイクが終わり、着替えて準備が出来たらいよいよ本番だ。
　撮影は途中に小休止を挟むが、基本夕方まで続く。
　長丁場の始まりだ。
（うん、大丈夫）
　望んだ仕事、望んだ世界。
　緊張はある。でも今日の撮影で着る服が、今まで出会ったことのない自分を見せてくれる。そんなドキドキがある。
　だから楽しい。
　現場に行く前に、自分の姿を鏡でチェック。ポージングも軽く行い。イメージトレーニング。
　鏡の中の自分は楽しそうに微笑んでいた。
　悪くない。
　準備は万端。本番を待つ撮影場所へ向かう。
「水樹ちゃん、今日は宜しく」
「宜しくお願いします！」
　挨拶を交わされると、本番スタート。フラッシュが視界を輝きに塗りつぶす。
「その服、今度はこういうイメージで一度撮ってみるか」
「もう少し挑発的な表情を」
「こういうポーズをとってちょうだい」
「よし、次の服に着替えて」
　等々。
　基本的な方向性は控室で聞いている。あとはカメラマンやディレクター、ほかの現場スタッフの指示に対応する。
　長時間の撮影に耐えられる体力と、要求にすぐに応えられる瞬発力がないと務まらない。
　小休止や、お昼ご飯も、スタッフとよりコミニケーションを計れる絶好の時間だ。仕事中はあまり話せないスタッフとも話せ、自分がどういったキャラクターか、知ってもらえるチャンスでもある。
　写真の写り具合などもチェック。
（手応えは良い感じ、かしら？）
　でも撮り直す可能性もあるので、心の準備はしておく。
　緊張は完全に抜かずに、でもリラックスをしておく。午後からの立ち時間の方が長いし、気を抜けば疲労が顔に出てしまうから。
　笑顔が資本。
（次は、どんな私に出会えるかな？）
　ハードだが、楽しい時間が再び始まる。

「お疲れ様でした！」
　夕刻に撮影は終了。メイクを直し、忘れ物がないか確認。スタッフみんなに挨拶をして家路へ。
　気づけばクタクタ。そして身体が浮くような、満たされた気持ち。
　今日も、色んな服を着た自分と出会えた。
「あ、終わったんだ」
　メールには、友達も終了したと書いてある。夕食の誘いも。
（今からなら、あの店がいいかしらね？）
　夕日に心地よい疲労を感じながら、水樹は電話を掛けた。

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