【生徒会総会】クラブ対抗！部費争奪戦ｂｙコメディエアー｜リアクション

【生徒会総会】クラブ対抗！部費争奪戦ｂｙコメディエアー

34.

　その時、廊下の奥から、聞きなれた声が聞こえてきた。

「あ、いたいた、しばっち、ガンバー」

　――彩葉さん！
　
　我先にと、駆け込んでくる実況班。
「激戦が、続いています！」彰尋がマイクを取り出す。

　――彩葉さんが、見てくれている。
　――彩葉さんが、応援してくれている。
　ただそれだけのことが、彼に再び生気を取り戻させ、何度でも立ち上がる気迫を与えてくれる。

　咆哮とともに、ぐっと体を起こす拓郎。
　その頭部が、思いっきり踏みつけられる。

　どこからともなくハンマーを取り出し、拓郎の頭部を踏み台にして、望月がとびかかる。

「おーっと、彼を踏み台にしたー！」

　階段を駆け上がりながら、彩葉が無常に言い放つ。
　声が若干上ずっているのは、興奮によってか。
　彼を心配している様子があまりないのは、たぶん深い信頼がそうさせているのだろう。

「最終手段……『ぼく★さつ』」
　てへっと舌を出して、ぶん回したハンマーごと、華道部に突っ込んでいく。
　彼自身が巨大な弾丸と化したようだ。
　華道部は跳躍して上方に回避。
　もちろん、それは計算済み。
　彼女たちの眼前にいるのは春彦。空中戦では、彼に勝るものはいない！

　スパァン！
　バトンが薙がれ、ついに華道部の風船が割られる。
　
　半ば気を失いかけの拓郎を「ゴメン、拓郎ちゃん！」と担ぎながら、望月は戦線離脱。
　春彦もとりあえず退避する。いつまでも逃げてはいられないが、この場にとどまれば、華道部の火力に押し切られてしまう。

　ジャッジ担当の三宅葉月も、今の逃走で反則を取らない。
　美術センスにあふれた彼女、公正性、面白さのほかに、審美性によってもジャッジを担わされていた。
　絵画的にバランスの悪いものは、どこかで比重が歪んでいるもの。
　ただ今の華道部と陸上部のバトルは、互いに力量を尽くした、美しいものだった。
　卓絶した肉体の技術に、花が添えられる、その色彩も見事だった。

　その時、ジャッジ用の携帯が鳴った。
　いよいよ、彼らが追い詰められたのだ。
　自分も、向かわなければならない。
　ふっと溜息をつき、彼女は暗がりに消えた。

　最高火力、絶対中２女王、華道部に隙があったわけではない。
　だが、仲間を犠牲にしての波状攻撃は、見事なものであった。
　躱されること前提のハンマーも含め、自分たちに傷を負わせないようにしているのも見て取れた。
　陸上部の彼、たしか……生徒会長の弟。

（おのれ、またしても生徒会！）

　手にした花を、ぐっと押しつぶし、華道部、再戦を誓う。
　　